足指の完全骨折

 政府統計の最新データ、平成二十五年度版を見て、私は「体重は女子
のすべての世代の基準値を軽く上越え」だとわかったが、身長との相関
なしなら、そりゃあ、背の高い私はそうなって当然じゃないの。
 再度データを見直したら、単に年齢別の計測結果の平均値が列記され
ているだけで、「これが普通」という目安になるものではない。
 それを勝手に早とちりして、勝手にいじけた私。
 早とちりは、左足薬指の突き指もそう。
 スパッと斜めに骨が離断した完全骨折だった。
 内出血はひどかったし、指を触ると痛いし、触らなくても痛い日が続
いたが、身悶えするほどではなかったので、前に一度、やはり足のどれ
かの指を突き指して半年とか一年とか歳月はかかったものの自然治癒し
たのと同じだとみて、放置していた。
 それが一ヶ月以上も経って診察してもらったら、レントゲン写真に現
われたるは、得体の知れない丸いもやもや。
 薬指の骨が一本の直線だとすると、その中心部分のうしろに仏像の光
背のようなものがある。
 青ざめる私。
 が、医者は、これができない人もいて、その方が問題なのだ、と言う。
 なるほど、あとで調べたら、このもやもやは「外仮骨(かこつ)」と
言って、骨がくっつき始めている嬉しい証拠。
 良くても悪くても正確なことを知りたい。プロに頼るが、自分でもイ
ンターネットで可能な限り調べる。そういう私がうろたえたのは、私に
は無関係だと思い込み、骨折の治癒過程を調べていなかったせいである。
 ただ、
「治療は固定するしかないとあったので」
 だからすぐに来なかったと告げ、治療法はそのとおりだと言われたら、
敢えてこの中途半端な時期に来た意味はあったのか、と煩悶が生まれる。
 もしすぐに来ていたら、
「靴が履けなかったですね」
 隣の指に引っ掛けてテープで固定するだけでなく、アルミ板を足の裏
に副木(そえぎ)代わりに固定するらしく、そこまでご大層な経験をせ
ずに済んだのは、すぐに来なかったおかげということになる。
 つまりは「知らぬが仏」で最後まで病院と無縁でいればよかったか。
 というのも、次回の診察は必要なく、治るまでに半年ぐらいと言われ
たら、今日は、骨折だったというショックな結果を知るためだけに来た
ことになってしまう。
 喜ぶべきなんだろうけど、脱力感は拭えず、
「えーっ、そうなんですか。うーん・・・」
 意味なき言葉を連発して、なかなか椅子から立ち上がれない。
 そんな私を医者はただ見守ってくれていた。