指から痩せたい

 先週、夜中に寒くて目が覚め、寝ぼけ眼で冬用の羽毛布団を引っ張り出
してくることになり、すわ秋だ、と思ったけれど、昼間はまだ蒸し暑い。
 その暑さのせいで私は太った。
 一年ぐらい前から太り始めていたが、それは、その前に急激に痩せてし
まい、そこからの復活の体重増加であった。
 それでも、閉店間際のスーパーマーケットでロールケーキを買って帰り、
舌鼓を打つほどの味でもないのに寝る前に全部食べきるというのは尋常で
はない。アレルギーで定期的に通院している担当医に話したら、そういう
行動を取ってしまう私の精神状態をなだめてくれる漢方薬が処方されたが、
薬に私の精神を制御させられるなんて、と意味不明の対抗意識が芽吹き、
薬を飲んでも、わざと積極的に食べて薬が効かないことを証明しようとす
る私自身であったので薬をやめ、順調に体重が増え続け、六月の時点で過
去の私の平均体重まで戻った。
 が、その後も体重の右肩上がりが続く怖ろしさ。
 八年前から朝晩体重を測って記録しているが、どんなに太っても、その
数値は超えない、という経験に安堵していたら、あっけなく抜き去るし、
それでも止まる気配はないし。
 深夜のストレス解消のお菓子は、もくとっくにやめた。
 おなかが空いていたら、その場合は豆腐を食べたり牛乳を飲む。
 私の何がいけないの。
 わからない。
 そうなると、人は自暴自棄になるものなのか。
 何をしてもしなくても私にはどうにもできないのなら、ストレスに身を
任せる。
 けど、じゃあ、私は寸胴おばさんで生きていくのね、と自分自身に確認
すると、悲しくなる。
 そんな状況下、体重が落ち始めた。
 私は何もしていない。
 ただ季節が進んだだけ。
 ゆえに、今年の夏の蒸し暑さで体調が狂ったのだ、と考えることになる
のであった。
 私は天然石の指輪が好きで、幾つか持っている。
 朝、心がその日の私に足りない色を教えてくれると、その色の指輪を選
ぶ。
 その色が視界に入ると私の全体の調和が取れていると安堵できるので、
指輪でなくてはならない。
 久しく途絶えていた心の声が、また聞こえ始めた。
 ところが、指に指輪が入らない。
 私の指輪は、小指以外で一番細い左手薬指用が数が一番多いが、すんな
りはまらない物が続出。
 なんたること。
 指も太るのであったか。
 それぞれの指輪が所定の指に無理なく収まってくれないと、非常に困る。
 成功したら、ようやく私の本当の秋。
 私、頑張る。