小学校の英語

 個人的に英語を教えている小学五年生が、
「学校の英語の授業がおもしろくなかった」
 と言う。
 公立の小学校で、英語の時間は外国人の先生が来る。
 なのに、なぜ?
 みんなで発音する時、隣の男の子が得意げに叫ぶ「ワン、ツー、スリ
ーっ」がバリバリの日本語発音なのだとか。
「え・・・?」
 日本人なら必ず躓く発音がある。
「th」「f」「v」「r」。
 たかが1、2、3、4、5に、それらの発音がすべて登場する。
 外国人の先生は、自分の唇に注意を向けさせ、たとえば3なら、舌を
出して、それを歯と歯で軽く噛み、息を吐き出すと「th」の音になるこ
とをしっかり見せてから、真似させたりはしないのか。
 しないんだ・・・。
 けど、だったら、なんのための外国人教師なんだろう。
 日本語を学ぶ外国人が「コニチハ」と言ったら、発音の仕方も込みで
「コンニチハ」と言えるよう指導してこそ、お金をもらって日本語を教
える教師と言える。日本人に英語を教える外国人は、そういう技術力が
なくていいのか。
「大量に聞けば、話せるようになる」のは、正しい発音を知った後の勉
強法。
 それに、相手が小学生なら、楽び感覚で正しい発音を覚えさせられる。
それが早期英語教育の第一の利点だ思っていたのだが。
 子供の能力を見くびっているんじゃないのかなあ。
 私の中学一年の教え子は、学校の試験の全教科の平均が九十点以上取
れなくて、携帯を買ってもらえないと言う。
 じゃあ、パソコンのフリーメールでもいいんじゃない、と英語のレッ
スンのあと、彼女専用のメールを開設した。
 だが、そうやって本格的にパソコン・デビューを指南するなら、キー
ボードを見ずに打つブラインドタッチも伝授しておきたい。
 基本は、一生、身を助ける。
「え〜っ」
 彼女は嫌がる。
 しかし、私が心に浮かんだ文章を口で言い、彼女の目を見つつ、キー
ボードでそれを打った結果を目の当たりにすると、素直に感服。
 その日は、ア行、カ行、サ行のローマ字打ちを覚えさせた。
「あと十回ずつ」
 私が命じると、
「おもしろいなあ」
 練習にのめり込む。
 メールへのログイン、ログアウトはさっとしか教えなかったが、ブラ
インドタッチをマスターするまで時間はあるしね、と思っていたら、三
日後。
 彼女からメールが来た。しかも、絵文字付き。
 私は、彼女の能力をなめていたかもしれない。
 この分じゃあ、あと二、三回で、ブラインドタッチは完璧に修得だろ
う。