棕櫚箒(シュロぼうき)

 連休は、不要な物をバンバン捨てて、本棚のうしろの壁も掃除するは
ずが、掃除機と扇風機、ついでに皿やザルやぞうきんなど、生活するの
に必要そうな物を、独り暮らしを始めるけどお金がないという姪っ子に
渡すという、私の部屋の大掃除とは関係ない小さな片づけを実行するの
で精一杯だった。
 それが原因だったのか。
 いや、大掃除の如何に関わらず、足を左右に大きく開いて内転筋を鍛
える初代レッグマジックは、私の部屋のベッドの脇にすぐに使える状態
で置いてあるそこ以外に、置ける場所はない。
 机を立ってドアに向かう動線上に位置するから気をつけねば、と常々
思っていたが、電話を受けて、部屋の外で至急確認すべきことがあり、
気が急いたら、左足の薬指をレッグマジックで強打。
 痛いけど、怖くて靴下を脱いで見られない。でも、風呂に入れば、い
やでも目に入る。付け根から半径四センチぐらいが皮内出血して、あお
じんでいる。
 青と言うより皮膚より濃い茶色に変色。でも、青色になる場合の方が
多いのかなあ。
 そう言えば、「家事も茶の間も変えた」という新聞の大見出しを「茶
のあいだ」と読んで、茶を飲む時間のあいだって何、と悩んだ私。
 滅多に遣わない言葉は、何かと知的刺激を与えてくれるようである。
 なんにせよ、今日は無駄に歩き回らぬよう、家に逼塞(ひっそく)。
 きのう届いた棕櫚箒(シュロぼうき)で、初めて掃除した。
 私は髪が長い。抜け毛が、え、こんな所に、という所まで進出する。
母に疎まれ、私も恐縮していたが、掃除機で吸うと、回転部分に髪の毛
が絡まって回らなくなるし、取るのがひと苦労。今はヘッド部分を解体
して水洗いできる物も発売されているようだが、ヘッドを壁の隅までき
っちり当てても、隅のゴミは取れないという構造上の限界は残る。
 モップ状の紙シートだと取れそうだが、取り切れないことがあるし、
レッグマジックや、その下に敷いたクッションの上など、平らでない場
所の埃は得意でない。
 壁の下方の巾木(はばぎ)の中央の凹部分や、上部の八ミリほどの出
っ張り部分に積もる埃を日々の掃除で取れないのも、ずっと不満だった。
 そんな私に神様が手を差し伸べてくれたのか、フローリングにも畳に
も良い棕櫚箒の存在を知った。
 鬼毛の方が良いというのなら、そちらにしましょう。だって、道具は、
使い心地を左右する。
 舞い上がる埃、に関しては、箒は本当に掃除機より劣るのか。具体的
な比較データがないから、惑わされないことにしたのであった。