買い物、病院、買い物

 病院に行く時は、病院に行ってから買い物をする。
 今回、右耳の中が異常に痛くなり、インターネットで耳鼻咽喉科の予
約番号を取ったら十三番。朝、九時半の診察開始後一時間以内には私の
番が来るだろうから、この行動パターンがもっとも効率良くなりそうだ。
 だが、時間は有限、つまり命は有限だという考え方が腑に落ちた直後
だったからか、診察までの朝の時間がもったいない、と思えてきた。
 折しも、朝早くから日が昇り、爽やかな季節。
 私は八時にスーパーマーケットに向かった。
 二軒のスーパーマーケットをハシゴして食料品を買い、九時を待って
日常品売り場へ。すべて買い終えたら九時十五分。耳鼻咽喉科の窓口は
もう開いているはずで、十三番なら何時ぐらいにこればいいか、確かめ
てから帰るべく立ち寄ったら、
「あ、四番が空いています。四番にしますか」
 ラッキー。
 しかし、それだと診察開始後ほどなく私の番になる。九時半まで、あ
と十五分。家まで戻っても間に合うのか。
 一瞬迷うが、もともとそうするつもりだったし、乳母車のように押し
て使うタイプのキャリーの中は、買った食材等が満杯。邪魔だ。
 それを押しながら走って帰り、家に着いたら、冷蔵庫に入れるべきは
入れ、朝沸かしたお茶をぐびぐび飲み、再度家を出る時は身軽なので、
躊躇なく走る。
 診察開始時刻に間に合った。
 自由に飲める飲料水の器械が設置されていたので、何杯も何杯も何杯
も飲む。
 そこにはもう何年も診察に来ていなかったので、初診のように問診票
を書かされ、診察券を新しくされ、それでも十五分ほどで私の番になっ
た。
 医師が、私の右側の口腔内のどこかを押して、
「痛いですか」
 見事に痛い。
「熱が出なかったのが不思議ですねえ」
 と言われ、病名を告げられた。
 え、それって子供がかかる病気じゃないの・・・。
 ありふれた病名すぎて、すぐに忘れた。
 十時十分、薬局で薬を用意してくれた薬剤師と対面。
 その後、もう一度買い物をして家に帰ったら、十一時。
 まだ午前中も終わっていないのに濃密な時間が過ごせたなあ、と感激。
病気じゃないみたいに活動的だったし。
 ところが、昼食後、最初の薬を飲んだ途端、疲労に襲われ、机に向か
ってしばし仮眠。私は病人なのだと自覚させられることになった。
 それでも、その一回の薬で劇的に回復。薬ってこんなに効くんだ、と
びっくりするとは、薬の効用をどこか信じていない私が暴かれたのであ
ったか。
 ちなみに、薬剤師には病名を問われた。