私は、目が覚めたら、勢いよくベッドから飛び出す。目覚めた途端、か
らだも意識も通常モードに入るのだろう。
起きた直後は頭がぼんやりして、のろのろ起き上がるしかないのが私の
普通であったら回避できたのに、とは思わない。
先週の文化の日、十一月三日のことである。
トイレに行こうと目が覚め、身を起こした途端、
「あっ」
嫌な感覚に襲われた。
目眩だ。
壁の端がぐい~んと動くことではない。
足がもつれることもない。
でも、目眩。
二度の経験から、間違いない。
二度目は去年の九月で、十年以上経っての再発だった。
一度目の時と比べれば遙かに症状は軽く、その日、耳鼻科に行った時に
は症状は治まっていた。が、今後の万一のために薬を処方してもらってい
たので、今回、それを飲んだ。
だって、祝日。
とは言え、平日でも果たして医者に行けたかどうか。
病院に行ける程度には体調が良い、という言い方は変だが、そういうこ
とはある、と思った。
陽が昇る前で外は夕暮れのようだったが、再度ベッドに横になるのは、
からだが拒否する。頭が横になる状態が怖いのだ。
椅子の背もたれを抱え込むようにして座って、少し寝た。
何度か嘔吐する。
と、玄関のベルが鳴った。
Amazonだ。
午前中と指定したけど、まだ八時半ですぜ。
郵便配達はどんなに早くても九時、というのを基準にしていい時代は終
わったのか。
この日はたまたま目眩のせいで早起きし、のろのろとした動作ではある
けれど顔を洗い、化粧もしていたから、配達人以外の不意の賓客にも動じ
ぬ状況が整っていたことに苦笑させられる。
去年、叔母にAmazonからプレゼントを贈った。
贈り物なので事前予告せず、「今配達中」という現状を確認してから、
「もうすぐ届くから」
と電話したつもりが、すでに配達人が来て一悶着あり、受け取らずに突
き返した、と叔母から返答があったのも、やっぱり八時半頃だった。
叔母は、頼んでいない物が送られてきたことに不審があったし、小包に
差出人名がなく、ますます罠だと思って、断固受け取りを拒否したという。
私はAmazonから送りたかったのではなく、その贈りたい品が一番安く
買えたから選んだだけなのだが。
今回は私用で、同じ理由もあったが、もっと切実な理由があった。
Amazonでしか手に入らなかったのだ。
★★★
ちなみに、先ほど、藤井聡太棋士が最年少四冠達成。
すごい勝負だった。