赤の他人の意見は

 新天皇の即位礼正殿の儀に参列した安倍昭恵夫人の白い服は、いろいろ
な記事で取り沙汰される前から、私も、テレビで見た途端、気になった。
 電車の中で真っ正面に座った女の子のスカートが膝丈だったら、今どき
に珍しくきちんとの両膝を揃えて座っていても、女の私ですら、目が膝の
奥へと吸い寄せられる。見えたとて、下にはいた黒いブルマーだがインナ
ーパンツがショートパンツのように見えるだけとわかっていても、そうな
る。店の奥を明るくすると入店客が増えるそうだが、それと同じく、膝の
奥は、つい目が吸い寄せられるのが人の本能なのかも。
 二十二日の儀式の参列席は目線より上だし、彼女は一番前に着席したの
で、誰の目もそこに向かって当然だった。
 しかし、立った時は、私は、膝丈や袖の異様な膨らみではなく、首に目
がいった。
 太い。
 いや、太く見えただけなのかもしれないのだが。
 横に長くくられた襟。後ろも普通よりくりが深く、横から見ると豆かラ
グビーボールのごとし。
 別の公式行事で似たようなシルエットのドレスを着用している全身写真
を見て、合点がいった。両肩が少し前に出た体型なので、そう見えるのだ。
 同じような襟の服を朝の情報番組の女子アナウンサーが着ていたが気に
ならなかったから、この分析で間違っていないと思う。
 それは、似合っていない、という印象になる。
 理由はわからねど似合っていないと、皆、一瞬で判断したのではないか。
 しかし、それは主観だ、と理性が働くから、どの記事もドレスコード
合う合わないという議論にすり替えたのではないか、と主観を述べても許
される一個人の私は推測するのであった。
 自分が好きな物が似合うとは限らない。
 自分とまったく無関係な人の意見は素直に聞いた方がいい場合が多いか
もしれない、と今回学んだ。
 ただ、その逆の場合は。
 今日のことだ。
 ホテルのトイレに入ったら、清掃の人から、
「髪が多いですね」
 と話しかけられた。
「そう見えるだけで、実は少ないんです」
 手で髪を束ねて見せる。
「あ、そうなんですか。いいですねえ。その髪型も素敵」
 私はパーマを当ててもこうはならないと誰もがわかる乾燥してパサつい
た癖毛で、眉の横あたりの髪のうねり方が変。うまく制御できない。
 今朝もそうで、気が沈んでいたのだが、えっ、褒められた・・・。
「ありがとうございます。そう言ってもらって、今日は一日、幸せです!」