つまらない質問

 普段は近くの本屋で買っているが、その時、ほしい本は店頭にないと言
われた。
 少し離れた規模の大きな本屋に電話したら、「ある」と言われたので、
取り置いてもらい、すぐに買いに行った。 
 レジでクレジットカードを出す。
「ポンタカードをお持ちですか」
 と聞かれて困惑。
 なんで、毎回聞かれるんだろう。
 いつも、ない、と答えていた。
 滅多に使わないので、財布に入れていないことも多いのだ。
 しかし、この日は言われるままに財布の中を探したら、あった。
 けど、
「現金で支払わないといけないんですよね」
 と私。
 すると、支払い方法に関係なく、来店へのお礼としてポイントが付くと
言われて、えっ。
 クレジットカードを出したらそう聞かれるということは、クレジットカ
ード支払い者への質問だというのは、考えてみれば自明の理であった。
 それを、毎回、首を捻っていたのは、クレジットカードにポイントが付
くのに、さらにポンタにもポイントが付くなんてあり得ない、と私は勝手
に思い込んでいたようである。
 聞いてよかった。
 正しく聞けば、疑問は正しく解消してもらえるのである。
 将棋は個人競技だが、現在、AbemaTVで、三人ひと組のチーム戦トー
ナメントが始まっていて、藤井聡太がリーダーを務めるチームの紹介動画
は、藤井を質問攻めするというものだった。
「死ぬ前に最後に何を食べたいですか」
 という質問が読み上げられると、私は苛立った。こんな質問をすること
に価値があると判断した大人がいることに、その一員として恥ずかしいと
思ったのだ。
 この質問を読み上げさせられた高見泰地も、
「十代に聞く質問かなあ」
 と首を傾げていた。
 将棋を離れた質問を目指したのだとしても、もっと実のある質問はある
だろうに。
 しかし、さすがは十八歳ながらもタイトルを二つ保持する藤井である。
「死ぬ前に食事が喉を通るのかどうか・・・」
 ぼそっと呟き、食欲があるうちはまだ死は先、という当たり前のことを
婉曲に指摘して、彼の方がよっぽど大人だ。
 でも、それで打ち切りにせず、死ぬ前という時期を拡大解釈して、
「カレーかなあ」
 と答え、対局の時によくカレーを食べていることが話題になっているこ
とに配慮したのであろう、大人の回答。
 私は一層恥ずかしかった。見ているだけの私になんの責任もないんだけ
ど。
 良き答えを引き出すのは、質の高い質問だけ。
 改めてそう感じさせられた。