レジの無人化とか

 生命保険の外交員から来年の卓上カレンダーが届いた。
 中を見て、ああ、やっぱり。
 紙面が小さいから曜日の表記が今回も一種類。
 でも、なんで英語。
 真ん中の枠は水曜、と無条件で信じられたらいいのだが、カレンダーは
日曜、スケジュール帳は月曜始まりという個人的な現状が、私にそれを許
してくれない。
 毎回、曜日を確かめる無駄な数秒。
 しかも、英語表記だと、日本語に訳す数秒がさらに加わり、イライラッ。
「えーっ。菊さんが」
 叔母に驚かれた。
 けど、カレンダーやスケジュール帳を見る時は気が急いている。そうい
う時は、母語じゃないと認識が数秒遅れる。
 私がこの話をしたのは、叔母から、
「オン、オフってどっちがどうやったっけ」
 と聞かれたあとだった。
 叔母曰く、近頃の家電製品は「入、切」表示が大半になったが、スマホ
だけは「~の時はオンを選んでください」みたいな表示が出る。
 オン、オフという言葉を久しく使っていなくて間違ったら困るから、教
えて。
 なるほど。スマホは、横文字を恰好良いと思う人達が中心層だから、そ
うなっているのか。
 近くのスーパーマーケットで、ある日突然、客自身がレジ横の器械のパ
ネルを操作して支払う形式に切り替わった。
 嫌な時代になったと言ったら、またまた叔母に驚かれたが、お金が絡む
ことでこの手の操作は、使いこなすしかない一定の対象のみには順応する
けど、その手のものはなるべく増えてほしくない。
 現金払いで買い物する商店街の店に行きたくなった、と言ったら、
「昔は、上から吊したザルからお釣りを出してくれたりしてた」
 と懐かしく回顧する叔母。
 その経験のない私はふむふむとその情景を想像。
 すると、叔母が言った。
「だんだん取り残されていく。付いていけないことが多くなって、生きて
いても仕方がないって言われている気がする」
 そうよね。わかる。
 ただ、人が最先端の便利さを便利に使いこなせる期間は、長くは続かな
い。
 歳を取ったら、実体あるもので認知するという原始的な能力に還ってゆ
く。
 でも、その原始的な能力があれば日常生活を送れるのが、皆に等しく平
等な社会。
 家電製品が日本語表記になってきたのなら、他の分野でもそういう変化
は起こるだろう。
 未来の年老いた自分のため、という視点を持てる技術開発者達は、きっ
と現われる。
 ただ、生きているうちに間に合ってくれるかはわからないけど。
 ・・・うまく慰められなかったかなあ。