趣味の理由

 職場で、私の今年のスケジュール帳の表紙を見て、スヌーピーが好きなの
か、と同僚から聞かれた。
 弾む声。
 単に中の体裁で選んだらこれになった、と答える私は恐縮した声になる。
 アメリカに住む友は、とにかくキティちゃんが好き。
 帰国した際、夫からのプレゼントだと嬉しそうに説明してくれたペンダン
トトップは、キティちゃんだった。スワロフスキーのクリスタル製だが、キ
ティちゃんのころんと丸い頭が付いているだけなので、その、首から上だけ、
という造形に「うっ・・・」となった私は、もしかして前世で人の生首を見
る機会があったりしたのかしらん。
 スヌーピーが好きな同僚には、なぜスヌーピーなのかと聞き、キティちゃ
ん好きの友には、なぜキティちゃんなのかと聞きたい。
 わからないことはわかりたい私。
 でも、聞かなかった。
 趣味や好きな事をはっきり主張する友人知人に、なぜと問い、また、テレ
ビなどでこの手の質問をされて答える人達を見ているうちに、結局、本人自
身にも絶対的な理由はわかっていないのではないか、と思うに至ったからだ。
 どんなに熱弁を振るわれても、その説明に私の「なぜ」は納得させられな
い。
 そもそも私は、なぜ、そんなにも人の趣味趣向の理由を知りたいのだろう。
 てらいなく「これが好き」と言える人が羨ましいからだろう、と気がつい
た。
 自分の好き、がわかっている人はいいなあ。 
 どうして私にはないんだろう。
 それは、人に聞いても、得られるものではない。
 ないのなら、仕方ない。
 私は、そう諦めたのだ。
 広く浅く、その時々で気持ちが動く場所が、私の趣味。
 今時点なら、私は躊躇なく、寝ること、と答えたい。
 今日は土曜日。
 仕事の疲れが出るのか、ちゃんと寝たのに、朝、起きたら、身体がだるい、
頭が働かない。ようやくシャキッとするのは夕方になってから。
 今朝、歯医者の予約があるのを危うく忘れるところだった。
 定期的な歯の検診。
 歯科衛生士から私の歯の状態を説明される際、仰向けの状態で丸い小さな
手鏡を渡され、見たら、目に入るは、歯よりも数ミリ程度の髭のちらほら!
 思わず鼻から毛が出ていないかと焦ってしまったが、マスク生活でも、み
んな、気を抜かずにちゃんとしているのかなあ。
 今、私は、インターネットで、将棋の団体戦、第五回ABEMAトーナメン
トのドラフト会議を見ている。
 書く時は、音楽も邪魔になる私なのに。
 見逃せない、見逃したくない。
 ひょこまわりか将棋崩ししかできないのに。