薬の出荷調整

 医師の処方箋があれば、薬は買える。
 そういうものだと思っていた。
 私はアレルギー。
 すべての検査で陰性なので、何に反応するのかは不明だが、発症したら陽
性の人と同じ症状が出る。
 その予兆を感じたら、漢方薬を飲むことで事なきを得ている。
 漢方薬は二種類。
 それが、片方がゼロ、もう片方も数包しかないというぎりぎりの状態で診
察予約の朝が来た。
 が、処方箋をファックスで受け取った薬局から、
「出荷調整で在庫がないんです」
 と連絡が来たとか。
 私はまだそこにいたのだ。
 受付が別の薬局に聞いてくれるが、ない。
 再び診察室に招き入れられ、まずは私が調べて近隣の薬局に問い合わせる、
でもどこも持っていないだろうから、その時は今日すぐは無理だが必ず電話
すると医師に言われ、私は急ぎ帰った。
 パソコンで調べて、行ける範囲の割と大きい薬局三箇所に電話すると、一
番数多く持っている所でも、片方だけで、私が必要な数の四分の一。
 医師に伝えるべく電話し、折り返しの連絡を待つ。
 そのあいだに、ふと、ここに病院があったはず、と気づき、その近くの薬
局なら、と電話したら、片方が百二十二包、もう片方が百八包あるという返
答。
 医師にどの薬局にもなかったと伝えるはずが、必要数には足りないけれど
当面はしのげる数を持っている薬局が見つかったと伝えることになった。
 ただ、処方箋に漢方薬は記されていない。どの薬局も持っていなさそうだ
ということで漢方薬抜きの新たな処方箋を渡されていたのだ。
 医師はその日の午前診のみそこに勤務している人なので、間もなく連絡が
つかなくなる。そう話したら、その薬局の薬剤師が、漢方薬の記載のない処
方箋でいいからファックスしてくれたら、すぐに医師に疑義照会すると言う。
 再度電話し、受付にファックスを依頼。
 すると数分後に受付から電話。
 医師が三十五日分の漢方薬を付け加えた処方箋を出したので、今の処方箋
を持って来てくれと言われる。
 これで薬が手に入る。
 ただ、午前診の時間内には着けないだろう。
 大丈夫ですと言われるも、私は走った。
 時間を過ぎていたが待合室には患者。
 かくて、朝いちの診察予約から三時間半、私はあたふたしっぱなし。
 でも薬が手に入るのだから、どうってことない。
 ただ、そうか。どんなに金を詰んでも無理は無理、が薬にも当てはまるこ
とはあるんだ。
 理屈ではあり得る。
 でも、こと薬に関しては困るなあ。