返事

 友人に宅配便を送った。着いたら、電話かメールをくれるだろう。 
 しかし、インターネットで配送状況の追跡調査ができるとなると、調
べたくなる。それどころか、登録すれば、私のメール宛に配送完了報告
を送ってくれると知ると、即、登録。配送相手のメールに、○○日○○
時頃配達します、と事前告知し、相手の都合で日時変更を受け付けてく
れるサービスもあるのだが、これは、受付け時間に間に合わず、利用で
きなかった。
 それでも、私が指定した日の翌朝8時33分に友人が受け取ったこと
が確認できて、満足である。ちょっとスパイ気分がこそばがゆいのだが。
 ところが、一日経っても二日経っても、当の本人からうんともすんと
も言ってこないので、満足の針が反対方向に振れだした。万々が一、も
らって嬉しいものでなかったとしても、それでも、お礼のひと言は常識
でしょう。
 そう言えば、この冬、知人から、フランスに卒業旅行に行く娘に何か
アドバイスをくれないかとメールで問い合わせを受けた時も、同じ扱い
を受けたなあ。出発の数日前まで私のことを思い出さなかったのなら、
軽い気持ちの打診なのだ、と、それに見合った対応をすればよいものを、
頼られたら“適当”が自分自身に許せない私は、あ、あれ!と思いつく
たび、面識のない娘宛にメールを送りつけた。
 二、三通送ったところで、娘から「ありがとうございました。早速の
お返事でした」と日本語力が危ぶまれる文章が送られてきたのが、最初
で最後となった。さすがに、母親からは、帰国後、「楽しかったみたい
です。また、写真でも送らせます」とメールが来たけれど。
 私は、メールでサービスセンターに問い合わせた際も、解決後、お礼
の書く人間である。しかし、自分と同じことを人にも期待することが、
いかに滑稽で、精神衛生に悪いだけかはわかっているつもりだ。
 それでも、あんた達、仕事では、まさか、そういう態度じゃあないわ
よね、と、つい、脅迫めいたことを思ってしまう。
 そんな私に、フランスから手紙が届いた。まだ私が返事を書いていな
いのに、もう届いた二通目。
 近頃、めっきり英語の比重が増したせいで、フランス語を書くのが億
劫になっていた私は、この相手を含め、出すべき三人への手紙を書かず
に放ってあったのだ。
 人を責めている場合ではなかった、と謙虚に反省して、大急ぎでエア
メールを送付。
 すると----この接続詞の使い方は論理的におかしいのだが----冒頭の彼
からお礼の電話がかかって来た。