利上げバッシング

 人から大きく遅れて去年の夏、初めて株に手を染めたものの、損切り
して、早々に株から撤退したが、証券会社のホームページには購入した
金額を入力したままにしてあり、たまに見るのだが、株価は下がる一方
で、事前にあんなにも勉強し、決算書の厳密なる分析により選んだ一社
だったと思うにつけ、自分の見る目のなさが情けない。 
 ところが、十一月に底を打ったのを境に風向きが変わり、今や、一緒
に登録してあった他の企業を追い抜いて、ダントツ一位の上昇率。右肩
上がりのグラフは、じっくり待てなかった私を嘲笑うがごとし。
 だが、日興コーディアルグループ三洋電機といった大手までも粉飾
決算していたとなると、決算書を拠り所にする手法が取れないことにな
り、そうなったら、ますます私は株には戻れない。
 この株価上昇、株主配当を受けても損益となったその企業だけに特別
でないのは、日経株価が上がり、TOPIXに至っては今月二十一日に十五
年三ヶ月ぶりの高値をつけたことからもわかる。
 奇しくも、それは日銀による利上げが実施された日。定石では、株価
は下がるはずなのに。同じく円高となるところが、いけいけ円安だから、
日本も舐められたものだなあ。
 政府は恫喝に近い横やりで去年十二月の利上げを阻止して世界に呆れ
られ、そうできなくなると、今回の利上げは日銀の勝手な判断だったと
不自然なほど強調したが、ならば、経済状況が良くなったという理由で
所得税と住民税の定率減税廃止を決めたのは、一体、誰なのサ。
 不思議なのは、テレビのワイドショーも、そういうことは取り上げず、
利上げのせいで消費が冷えると、政府に同調する声ばかりだったこと。
 データ改竄などしなくても、取り上げるデータや情報を選択するだけ
で恣意性が出ることがよくわかった。
 まあ、論文でも仕事でもそうしないと一つのストーリーにまとめ上げ
られないので、要は、光の当て方によっては別のストーリーもあり得る
と気づく柔軟性が大切だということだろう。
 たまたま、私は、金利もそろそろ正常化すれば派で、否定的な意見に
敏感になれたわけだが、とすると、夫と暮らす七十五歳以上の妻は死亡
リスクが二倍という愛媛の医師の調査結果に、調査の地域と時期と対象
者から必ずしも一般化できないかもと意見した人は、そのデータにやま
しさを感じるからなどでは決してなくて、退職後、妻から厄介者扱いさ
れない自負があったからかしらん、などと、その調査結果には直感的に
頷けていた私は思ったのであった。