『原子炉時限爆弾』の良心

 福島原発の事故は赦せない。
 けど、もういいよ。
 福島原発でトラブルが続発するたび、お手上げ状態の東京電力
 九州電力は、やらせメールで民意を操作しようとした。
 関西電力は、約四百年前の天正地震の大津波の事実はなかったこと
にして原発を建設したことが発覚・・・。
 あれ以来、漏れ聞こえてくる原発関連の報道は、どれもこれも「不誠
実さの暴露」一色で、ど〜せ報道されない「不誠実さ」も山ほどあると
思うと、情報そのものにうんざり。
 そんな心境のさなか、図書館から広瀬隆の『原子炉時限爆弾』を借り
る順番が回ってきたが、サブタイトルの「大地震におびえる日本列島」、
目次を読み、サッと全ページに目を通せば、精読せずして中身は要約で
きる。
「原子炉を建てるに足る強固な岩盤が存在しないニホンなのに、だいじ
ょーぶだいじょーぶとねじ曲げたデータで人々を騙し、かくも多数の原
子炉を林立させてしまった原子力産業。が、今やニホンは大地震の活動
期。ひとたび大地震が起これば、原発が破壊される″原発震災″が起こ
り、近未来に、高い確率でニホンは破滅する」
 果たして、読んだあとも要約に変更点はない。
 それでも、退屈しのぎに読み始め、読み終わった時、斜め読みでわか
った気にならなくてよかったと心底思った。
 原子力発電所の大事故は、
「一つの国家や一地方を壊滅させ、人が住めなくなる大惨事の話〜事故
によって外部に放出された大量の放射能汚染によって、その一帯で農業
ができなくなり、水と食べ物を失うからである」
 あるいは、
「大事故があれば発電所内の電源系統が断絶され、同じ敷地内に林立す
る原子炉が連鎖的に事故に巻き込まれると予想される」
「おそらく日本という狭い国は″放射能汚染地帯″の烙印を押されて世
界貿易から取り残され、経済的にも激甚損害を受けて廃墟になると考え
るのが、最も妥当な推測だろう」
 去年の八月二十六日に発売されたが、三月十一日の福島原発の事故の
あとに「後出しじゃんけん」で書かかれたのかと思いたくなるほど、現
実をなぞっている。
 データを正しく解析すれば、こんなにもブレの少ない予測ができると
教えてくれた筆者。
 でも、迫り来る原発震災は、福島原発ではなくて、浜岡原発だと著者
は恐れていたではないかって? 
 確かに。
 が、それゆえ、全知・全データを結集しても、次の巨大地震の発生場
所を正しく予測するのは不可能だとわかろうというもの。
 私は、図書館に本を返すと、この本を購入した。