さすが、カシミア

 今日は久しぶりの快晴。
 新緑は眩しいし、ツバメは巣と大空を飛び回って、生きているだけで
幸せに思える日であった。
 が、雨や曇天もまた良し。
 私の好きな「しゃが」は、そういう天気にこそ映える花で、今が見頃。
 ただ、先週の大雨の日、男友達から夕食に誘われた時はちょっと困っ
たなあ。肌寒いのでカシミアのV首セーターを着たかったが、クリーニ
ングに出したあとだったのだ。
 仕方なく、ウールの半袖セーターを着た。
 前に買った福袋に入っていたのだが、ウールなのに半袖というのは、
着る機会が著しく限定され、可愛くても売れず、バーゲンでも売れ残り、
福袋で処分される運命になったと思われるが、現に、私自身、まだ数回
しか着れていない。
 襟がゆるく立っているため、気温が少しでも上がったら肌がちくちく
しそうな不安は、黒という色の重さの解消も兼ねて、淡い色のスカーフ
を中に巻くことで対応してみた。
 これに黒地に白いパネルプリントのスカートのコーディネイトしたら、
男友達は、自分のために気合いを入れておしゃれしたと受け止めてくれ
たようだが、私は、来年から、冬物のクリーニングはもう少し遅く出そ
うと考えを巡らせている。
 ところで、カシミアは、十年以上前に叔母にもらったとっくりセータ
ーを一枚だけ所有していたが、すでに家用に格下げして、ほかのウール
のセーター同様、温水で、手洗い、または洗濯機の弱水流で洗っている。
 それを、先月、奈良のお水取りの際、一時的に外出用に復活させた。
 去年の十二月にも書いたように、ウールのとっくりは首がシカシカす
るけれど、カシミアはそうならないことに気づいたのだ。しかも、長年
家で洗っていても、ふんわりした風合いは保たれている。
 さすが本物、と感激して、家用にしてしまったことが悔やまれてきた。
「カシミアは一生もの」は、たぶん、そうなのだろう。
 一生は大袈裟でも、十年や二十年は軽く持つはずで、ならば、早く買
うほど、長く着られて、結果的に割安になる。
 そんなことを考えていたら、バーゲンでV首のキャメル色に出会った
次第。
 冬の終わりだったので、二回、袖を通しただけでクリーニングに出す
ことになったが、家で洗おうとチラッとでも思わなかったのは、そりゃ
あ、半値になってもウールのセーターの定価以上という事実の前では、
やはり、「後悔、先に立たず」という諺が私を引き留めたのです。