「学ぶ」は「真似る」

 輸入の絵本や児童書も扱っている本屋の近くまで行ったので、立ち寄
った。
 個人的に英語を教えている子供達のレッスン用に良い本があるかなあ。 
 日本製の英語教材は、単語や英文の下に和訳とか読みがカタカナで載
っていて、目に邪魔なものが多く、一体、誰のための本ですかぁ、と首
を捻りたくなる。
 決定的に欠けているのは、異国の匂い。
 日本人が描けば、どうしても日本的になる。でも、せっかく外国語を
学ぶのなら、本にも異国を感じてもらいたいじゃない。よって、中学生
以下には、絶対「洋書」。
 が、子供達の反応を見た結果、「同じのどーれ?」の類い以外は、洋
書でも、私が指差す絵以外に目が向かったりして注意が散漫になるとわ
かり、今は主に絵カードを用いている。
 それで単語を覚えたら、私が英語でヒントを言って、子供達がどのカ
ードか言い当てる。そのうち子供達は私の役をやりたがるので、順番に
ヒントを言う役を替わる。子供達の英語は文章というより単語の羅列だ
が、それでOK。そんな風に、徐々にゲームのし方をバージョンアップ
してゆくのだ。
 あ。だけど。
 洋書を買っても、それを使わず、私が絵カードを作るのなら、バリバ
リに和風じゃん。
 はい。矛盾です・・・。
 ただ、私が描くと、かたつむりは、シュールすぎて、不気味な怪獣の
ごとし。蝶は、アゲハチョウを仔細に描き込んだら、蜘蛛の巣のような
文様(もんよう)。
 猫は、選んだ毛並みがまずかったのか、「tiger(虎)」と言われ、
そうよね、高校時代に絵の才能には見切りをつけた私だもの、イラスト
に方向転換するべきかしらん。
 イラストは、手本さえ見つかれば、割と簡単に真似できることを発見
したのだ。
 しかし、なんでも「きゃー可愛い」が判断基準になっている昨今の風
潮に食傷している私であれば、好きにできるここで踏ん張らずして、ど
こで踏ん張るのか。
 嬉しいことに、子供達は、リスがちゃんとリスに見える絵だと、「先
生。絵、上手やねえ」と感心してくれる。
 そうか。君達にも、大人の画風は理解できるのだね。
 と、私の絵に俄然、触発されられた小学生が、レッスン後に、私を見
ながら私を描いた。
 それまでは、頭にティアラ、スカートひらひらのメルヘンお姫様の私
ばかりだったのが、最後の仕上げに、ほうれい線をしっかり描き加える
ほどの観察眼。
 完成作品を見て、その子自身が驚いた。
「うわ〜。老けた菊先生やあ」
 それを写実と言うんですワ。