ストレスの原因

 ストレスは「原因を取り除くべし」。
 正論である。が、そう言われたら、自分の外に原因を探したくならな
いか。
 私は悪くない。私にストレスを与えるようなことをする人や環境が悪
い。ただすべき対象は私の外にある。けど、簡単には退治できないので
ストレスは消滅しない。何度も言うようだけど私は悪くないんだからね、
とスタート地点に戻ってきて、堂々巡り。
 ということは、この思考は間違っているのかも。
 そういう目で見回してみると、同じ外部環境下でも皆が皆同じストレ
スを感じるわけではなくて、個人差があると気づく。
 他人は変えられないというこの世の絶対的な真理にも思い至る。
 外部のせいでストレスを感じるのは間違いないが、感じるのは私自身
なのだから、自分の感じ方や行動を変えれば、ストレスがストレスでな
くなるかも。
 つまり、ストレスを「感じている」人自身に原因が見つかる、という
のを短く「ストレスの原因」と言っているってこと。
 私が変わる? 私は悪くないのになんで私が変わらなくてはいけない
の、と思っていたいうちは気が済むまでそう思い続けてOK。
 ただ、自分自身は変わったのに、周りが何も変わらないどころか周り
からの嫌なエネルギーがさらに強化するようなら、居場所はほかにもあ
ると信じて、飛び出す。これ以上我慢すると自分自身が崩壊するという
一線を越えてまで理不尽を受容するのは、自分で自分をないがしろにし
ていることになり、生命体として危険な状態になるからだ。人は、自分
で自分をいじめてはいけない。
 ・・・言うは易し。
 先日、ヨガ教室で、マットに仰向けになって行なうポーズを何種類か
続けてやっているさなか、私の隣の太った寸胴(ずんどう)おばさんの
お腹から多彩な音が聞えてきた。朝食抜きでおなかがすいたのか、ヨガ
の動きで腸の動きが活発になったのか。
 と、ただならぬ臭いが床を這って私の鼻に到着。
 私は右側の空いたマットに移動したい。でも、そうしたら、寸胴おば
さんは自分だけの秘密にできなかったと気づいて、恥ずかしいだろう。
そう思うと耐えるしかない。
 暖房を入れる冬は床の上に臭いが長く留まるものなのか。寸胴おばさ
んのお腹ゴロゴロが終了しても私は臭いにさいなまれ続け、一方、臭い
の元のおばさんは素知らぬ風情。
 なんか、私、割喰ってないかい。なんで優しい人が損をしなくちゃな
らないの。
 腹立ち収まらぬ私。
 えっ、そのストレスも私自身のせいですって。
 確かに正論だけど・・・。