願えば叶う

 今年の夏は例年になく体のあちこちを噛まれまくった。蚊の仕業だと
思うのだが、他の可能性もあるだろうか。
 子供の頃、寝ていたら「ブーン」と音がするので、この蚊を退治せず
して安眠はなし、と家族全員起き出して、無事目的を遂げ記憶がある。
今の蚊は音を出さないのだろうか。
 もちろん、そんなわけはなく、ただ、その音が聞き取れないほど生活
の雑音が大きくなったということなのだろう。
 蚊に刺されるのは嫌だ。だが、テレビで蚊の生態観察の放映なんかが
あったら、じっと見入ってしまうと思う。血を吸うヒルは人間の立場か
らすれば唾棄すべき無益な生物ということになるだろうが、彼らには彼
らなりに立派な生存意義があるはずだし、彼らの目線に立つと、「気持
ち悪い」の一言で一蹴するのは人間の勝手な傲慢であると感じずにいら
れない。そう感じるのは、ジャングルで今まさに頭から飲み込まれよう
としている動物を見て、我が身をその立場に置いてみたりしてしまう私
だからか。
 ところで、動物の生態観察の番組を見ていて、「あっ」と閃いた。亜
熱帯の密林に住む、花の蜜しか食べない草食性のネズミが夜体温を下げ
て寝るのは、温度で獲物を感知する蛇から身を守るためだとか、木の葉
にとまると羽根が木の葉そっくりの模様に変わる生き物は、そのように
して天敵の目をくらますという知恵を見続けているうちに、やはり、絶
対「強く願えば叶う」と確信したのである。
 生き延びるために必要だからこうなりたい、と一匹一匹が思ったかど
うかは知らない。が、少なくとも、その仲間は皆一様にそう願い、それ
が実現したのだとは言えまいか。そうでなくて、どうして、そんな、と
てつもなく合理的で賢い知恵が体現された体を獲得できるだろう。
 必死で求めれば、望むように進化できるのだ。幸い、人間には一人一
人に与えられた素晴らしい精神活動というものがある。ここは一つ、個
人であっても、「願えば叶う」を信じてみるべきだ、と改めて思った次
第。