私なりの進化

 遠方より友が来たりて、会った。落ち合ったのが観光地でもあったの
で、デジカメを持参する。
 ところで、デジカメって、フル充電してほとんど使わなくても、1ヶ
月ほど置いておくと放電してしまうものだったのか。そうとは露知らず、
撮ろうとしたら、電池がないと警告が出、一枚も撮れずじまいに終わる
という情けない経験をしたばかりだったので、今回は、朝充電して出か
ける万全体制で臨んだ。
 オプションで選んだゴールドメタルの超薄型。ジャケットのポケット
に忍ばせ、さっと出せたらスマート。けれども、私のジャケットのポケ
ットは飾り物で、それができない。安もんだとこういうこともあるのだ
と気がついても、後の祭り。毎回、バッグの中から出してこなくちゃな
らないのが面倒くさい。
 とぼやいたら、「そんなはずはない」と友が確信に満ちて言い、生地
を強引に引き裂くように引っ張ったら、あらまあ、本当に、縫いつけて
あった糸がほどけてきた。
「ええーっ。でも、どうしてこんなにしっかり縫いつけてあるのよ!」
 私は、自分の無知を、行き過ぎた縫製のせいにした。
 今、パソコンで音楽を聴く世界にはまっている。知人がQuick Timeム
ービーで編集したというのをダウンロードしたのがきっかけで、私の中
に、初めて、その世界への扉が開かれたのだ。ムービーから音楽を連想
したという若干の思考のねじれはあるが。
 パソコンに入れたら、勝手にソフトが立ち上がる。一曲一曲の録音時
間もわかれば、今、そのどの当たりまで再生が進んでいるかもわかる。
目から入ってくる情報量の多さに大感激だ。
 歌だと聴き取りにくいフランス語も実に明晰に聞こえる。つまり、音
質として必ずしも鑑賞に堪えるレベルとは言えないことになるのだが、
言葉を聴き取りたい場合にはもってこいだ。
 インターネットの普及により、ほか国の新聞もすぐに読めるし、外国
語を学ぶのになんて恵まれた時代になったのだろう、と思ったが、ロン
ドンの大英博物館古代ギリシャ遺跡やロゼッタストーンの実物を見て、
もしイギリスに生まれていたら、私はきっと歴史が好きになれただろう、
と思うようなものかもしれない、と考え直した。
 人からかなり遅れての無知からの脱却。
 そして、パソコンがあれば満ち足りる生活がますます深まっている。