異変はシグナル

 保育園で英語を教えて帰ってきたら、右の白目に赤い筋が多数発生。
 でも、寝て起きたら治っているだろう、と思って寝たのを思い返すに
つけ、「願えば叶う」とか「信念岩をも通す」、いや、「棒ほど願って
針ほど叶う」でもいいのだが、そういう言葉を支えに前向きに生きるこ
とは大切だが、変えられない現実があることも知っておくべきだと感じ
る。
 朝起きたら、目ヤニで目が開かない。
 結膜炎ということで、目薬を処方された。
 おかげですぐに治ったけれど、医者に行かなくても自然治癒したかど
うか知りたくなるのは、祖母にもらったオメガの金時計のことを思って
しまうからだ。
 日本に返還される前の沖縄で購入したという今やアンティークの腕時
計をして行ったら、友達から携帯で「あとどのぐらいで着く?」
 え。まだ約束の一時間前でしょう。
 腕の振動で動く時計は、使わずに長く置いておくと故障しやすいって、
と遅刻を咎めず慰めてくれた友は寛大だが、遅まきながら、会っている
あいだ中、一心に腕を振っていたら、帰りの電車の中で時計が突然動き
始めてくれた。しかし、私の念力も、それが限度だった模様。
 四年前に修理に出した際、三、四年ごとにオーバーホールが必要と言
われていた、その予言通りになったことに、私の心はもだえる。
 修理代で普通の時計が買えると思った記憶も戻ってきたので、しばら
くは一年前に購入したSWATCHでいこう、と決意を新たにしたら、その
途端に、バンドにはめ込まれていたオレンジ色のパーツが取れた。
 保証期間終了の一日前のことで、保証期間の決め方に深い意味を勘繰
りたくなってくるではないか。
 急いで店に行くと、「バンドは保証外なので、バンドを変えるか、瞬
間接着剤ででもつけてください」。
 バンドを変えるって、一体型の商品で不可能なことをよく平気で言え
るもんだわね。
 すると、バンドと言えど、たった一年の保証期間内に壊れたことが癪
に障ってきて、「やっぱり安物は駄目ねえ」と嫌味を言ってみるが、あ
ゆ系ヘア&化粧の没個性店員は、にかっと笑って「すみません」。
 まあ、売ることと、保証書に書かれた対象の修理を受付けるだけが仕
事の店員に何を言っても、のれんに腕押し。
 わかっていて言ってみるのは、商売人の街に生まれた人間の性(さが)。
 家で瞬間接着剤で格闘してみたら、今まで成功したことのない不安が
的中して、くっつく代わりに、隣のパーツがもう一つ取れた。