デザートの理由

 再びフランス人宅に夕食に招かれた。
 外で待ち合わせて一緒に帰り、彼女はそのまま台所に直行すると、手
を洗わずエビ料理に取りかかり、途中でトイレに行っても、案の定、手
を洗わなかったが、そうして出された料理を食べた私は、体調を損ねる
こともなく無事帰還した。
 まあ、エビは火を通す料理だったからね。
 ということは、今は彼らも寿司を食するようになったが、基本的に生
ものを敬遠する国民性は手を洗わないことに起因するのか、と理解しそ
うになったが、まあ、単なる偶然だろう。
 ところで、デザートである。
 果物でもヨーグルトでも何でもいいのだが、デザートなしで食事を終
えるのは大罪のごとくそわそわする彼らを、私は、いつも若干疎(うと)
ましく感じていた。が、個人の好みを越えた国民の常識となっているか
らにはそれなりの理由があるのかも。
 日本は一汁三菜。細かい計算などできなくても、その皿数さえ守れば、
ほぼ必要な栄養素は摂取できることになる優れものの指針である。
 フランスの法則は、もちろん、デザートで完結する。
 デザートとは何ぞや。
 甘い物。
 で、私は閃いた。
 日本料理は味付けに砂糖をよく使う。つまり、食事中に甘味を摂取し
ているため、敢えてデザートを必要としないのではなかろうか。
 すると、まさしく、フランス人の舌は、甘さと辛さが融合した甘辛さ
を食事として受け付けず、ために、アジア料理を嫌う人達も多いそうな。
 そのせいだったのね。フランスで手料理を頼まれ、日本料理ならぬ中
国料理の酢豚を作ることにし、缶詰のパイナップルを入れようとしたら、
料理にそれはあり得ない、絶対に入れるなと強硬に抵抗され、やむなく
諦めさせられたのは。
 そして、もし日本人がうわべだけ真似してデザートの習慣を取り入れ
たりしたら、糖分過多になる恐れがあるってことなのね。
 そうでなくても、天使の笑顔で糖尿病に誘う(いざなう)ジュースや
お菓子の餌食となり、糖尿病予備軍の人達の急増ぶりは目を見張るもの
らしいし。
 ちなみに、ペットボトル飲料は日持ちがしない。
 にもかかわらず、冷蔵庫に入れておけば大丈夫だろうと、開栓してか
ら何日も経つのを平気で飲む人がいる。
 大容量のペットボトルから注がれると、その不安ゆえに、本当は飲み
たくない。
 ところが、フランス人宅でも日本人宅でもそうなので、これについて
は、うーん、〃Myお茶〃を持参することかしらん。