それでも一人旅(フランス)

 フランスに行ってきた。
 パリからTGV(新幹線)で三時間半ほどのブルターニュ地方に住む
友人宅を泊まり歩くのが目的。
 飛行機は夕方着くので、すべてが順調にいくと見るなら、その日のう
ちにTGVに乗って現地まで行きたいが、飛行機が定刻に着くのか、市
内に出るのにどれだけかかるのかは、その時にならないとわからない。
 それに、最終のTGVの発車時刻二十分前ぐらいまでに駅の切符売り
場に辿り着けたとて、その程度の時間の余裕でTGVに乗れるのは奇跡
に近い。
 対面の切符売り場では、一人一人の客にやたらと時間がかかるのだ。
ニホンで買っていくのは手数料の上乗せが馬鹿高くて、論外だし。
 しぶしぶ、到着日はパリ市内に一泊を予定する。
 帰国便に乗る前日もパリ泊を予定したのは、これまた、あらゆる万が
一を想定してのこと。
 パリにいるあいだに、パリ近郊に住む友達と会えたらなあ。
 近郊と言ってもパリの南東九十キロほどの地方なので、
「私の到着日か、帰国する日に会えたら嬉しいです」
 私の打診は遠慮がちになる。
 すると、
「飛行場まで迎えに行くし、その晩は私の家に泊まって」。
 それどころか、
「TGVで行かなくても、私が車でブルターニュまで送ってあげる。帰
国する日も、ブルターニュから空港まで送ってあげる。私は、適当に宿
を取って、一人で好きに観光するから」。
 いくら、私の旅に便乗して、自分も、海が、島々が、個人所有の船々
が停泊する港が美しき地方を楽しむのだと言われても、車だとほぼ一日
かかる長距離の往復。彼女をアッシー君扱いするのは気が引ける。
 しかし、フランス人がそう申し出た場合、遠慮は無用なのだろう。
 また、一旦計画を決めたら、よほど理にかなった反論でなければ、受
け付けないのかも。
 彼女に、私が生まれて初めてパリに行った時に入ったレストランのこ
とを話したら、彼女も知っていて、
「じゃあ、予約して、そこで夕食を食べましょう」
 ということになったが、急いで食べても二時間は必須。
 そのあと、一、二時間かけて彼女の家に着き、翌朝八時にはもう、彼
女の四輪駆動車でブルターニュに向けて出発するのかあ・・・。
「その晩はパリ市内のホテルに一緒に泊まりましょ。ホテル代は私がも
つから」
 提案するも、彼女がうんと言わない。
 私はいいのよ。眠くなったら、助手席で寝ればいいんだし。
 ということで、一人旅。けど、一人きりなのはニホン国内と飛行機の
中のみ、という十三日間の旅となった。