一人でも学級崩壊

 私が個人的に英語を教えている小学生は、登校拒否になっていたのが、
二学期から午前中だけ行き始めた。別の教室で別の先生に教えてもらっ
ている。
 クラスの先生がひどくて登校拒否になったと聞いた時、そりゃあ、そ
の先生が悪い、とほとんどの周囲が反射的に反応した。
 けれども、片方だけの意見を鵜呑みにするのでいいのか、と冷静さが
戻ってくると、親に言葉を補ってもらってようやく言いたいことが伝わ
る子が、クラスのみんながいる中で、本当に先生に意志を伝えられたの
か、伝えたと思っているだけでは、と想像されてくるし、周りの子が叱
られているのを見て、叱っている先生が怖くなったと言われたら、自分
が叱られたのでもないのにと怪訝な気持ちになるし、そんなことで登校
拒否になられる先生も大変だなあ、と先生に同情したくなってくる。
 集団の中は、家で大事にされている時とはわけがちがう。
 自分の感覚だけを是として押し通そうとすると、社会に適合できなく
て、苦しくなることもある。
 そういう時、大人であれば、「自分の受け止め方が悪いと考えてみる」
という画期的な方法をアドバイスできるのだが、それを理解するにはま
だ幼すぎる。
 だが、時は偉大だ。
 登校拒否になってから初めて私の英語に来た日、玄関先でうずくまり
〃火の玉泣き〃したのは「先生はみんな同じかい」と苦笑だったが、そ
の後、たまに来ることがあると、着くなり「疲れた〜っ」と玄関に寝そ
べり、勉強を始めても、すぐに席を立って部屋をうろつくし、部屋の隅
の大テーブルの下に身を隠して出てこなくなり、普通に勉強している子
が「勉強は楽しくなくっちゃ」と真似をして私に叱られ、そんなこんな
で、その子が来ると、ほかの子がレッスンに集中できないようになった
のだ。
 それはもう驚きの光景で、幼稚園の時は、横線の上に同じ大きさでア
ルファベットが書けない程度の突飛さを見せる程度だったのにと思うと、
不思議で仕方がない。
 実は、私が英語を教えている保育園では、収容人数が少ない割に、ち
ょっと危ないかなあ、と見える子の比率が高く、その親世代が添加物を
大量に摂取し出した初めての世代だから、という説は耳にしていた。
 でも、「大型スーパーのトイレで幼児がいたずらされる」デマメール
騒動と同じく、根拠のない話だと聞き流していたら、二年後から、環境
省が、化学物質の子供への影響調査を十万人規模で開始することが決ま
ったとか。
 悪い結果が出た時の解決策は用意されているのだろうか。