生キャラメル

 だいたいにおいて、行列するぐらいなら、あきらめます、というのが
基本姿勢の私。
 しかし、テレビの威力はすごい。
 花畑牧場の生キャラメルを買うのに、一時間半、並んでしまった。
 北海道は遠いし、通販は常時「品切れ」状態で、本当は売ってないん
じゃないのと勘繰りたくなる。デパートの限定販売は、普段、人気のな
い階段に長蛇の列の異様さが、テレビで放映されるほど。
 が、同じデパートでも、郊外店ならそこまではならないだろう、と新
聞の折り込みチラシを見て、買いに行く気になった。
 開店十分前でも充分余裕、と高を括っていたら、一番乗りの人は八時
前だったとかで、恐怖の「階段行列」の最後尾に。
 離脱しなかったのは、買う気迫のある今回を逃せば、二度と並ぶ日は
来るまい、と確信できたから。
 ホワイトキャラメルはすでに売り切れということで、プレーンとチョ
コレートを二箱ずつ買う。ワンセットは友達に持っていくつもりだった
が、うしろに並んだ人に「二時間ぐらいが限度かなあ。それを超えると
溶けるし」と言われ、友にはクール宅配便で送ることにして、買うや否
や、家にまっしぐら。
 そして、味わう。
 ・・・。
 舌に載せると、ちょろっと溶ける。けど、それが、そんなにすごいこ
と?
 テレビで、タレントの皆がみな、口に入れた途端、「うわっ。溶ける
ぅ〜」と驚きの声を上げることから、一瞬のうちに溶けて消えるみたい
なすごさを想像していたことに気がついた。
 今、関東で『そうだ京都、行こう』というコマーシャルがガンガン流
れているそうだが、関東在住となった転勤族の知人は、
「現地を知っていると、そこまでの鮮やかさは違うやろ、と思う」。
 私は、映像の紅葉を本気で信じる素朴な人、と同列だったわけね。
 それに、よく考えてみると、キャラメルなどはほとんど食べないので、
もともと比較できる素地を有していない私ではないか。
 ただ、そういう人間が、別段はしゃぎもせず、「これが普通なんじゃ
ないの」と反応するものこそ、高水準の本物、ではあるのだろう。
 人工のどぎつさがなく、可もなく不可もなくフツーだと感じる。
 農家からもらったサツマイモで〃芋ようかん〃を作ってみた。
極力砂糖を減らし、サツマイモの甘さに期待する。
 そのかそけき甘さをわかってくれるかなあ、と不安を抱きつつ、家庭
教師先の子供達に持っていったら、
「美味しい」
 一気に平らげてくれた。