電話

 遠方に住む四月生まれのその友には、長電話が私からの誕生日プレゼ
ント。
 電話代を気にして恐縮されるが、ケータイの無料通話料金が翌月に持
ち越せる限度いっぱい近くまで貯まったのを一気に使い切る目的も兼ね
ているので、
「だから気にしないで」
 半年後に再び限度額に近づく頃には十月生まれの友の誕生日が来る。
世の中、うまくできているなあ。
 さて、四月生まれの友とは、互いの都合で電話が今月までずれ込んだ
が、日時が決まると、彼女に電話する前にケータイ会社に電話した。前
日時点における無料通話料金の残高を問い合わせ、そこから無料で話せ
る時間を割り出しておこうというわけだ。
 呼び出し音を待つあいだ、ちょっと緊張する。
 が、そうだった。この会社は、自動音声ガイドからまずは数字の「九」
を押すよう指示され、従うと、すぐに担当者に繋いでくれる。
 けど、普通はその状況に辿り着くまでのハードルが高い。
 うちの電話はダイヤル回線なので、数字を押しただけではトーン信号
に変わらないが、そういう電話の対処法を、自動音声ガイドが述べてく
れることは滅多になく、何かで聞き知ったシャープだったかアスタリス
クかを数字を押す前に押してみるも、うまく行かないことも多々。
 状況を察して「担当者に回します」と反応してくれればホッと安堵。
入力内容が読み取れないからかけ直せと言って一方的に電話が切れると、
大いにめげる。
 その点、デパートはどこも第一声が電話交換手の生の声で、花丸の安
心感だなあ。
 以前、私はデザイナーとよくやり合ったものだった。
 その級数では文字が小さすぎて、年配の人には絶対読んでもらえませ
ん。
 やれ英語だの横文字だのって注文するけど、一体、誰が読むんですか
ね。
「デザインは、格好良さが一番」
 わかりました。横文字については了解しましょう。でも、日本語の文
字が小さすぎるのは・・・。
 焦る必要はなかったか。
 老眼世代が増えるにつれ、文字がどんどん大きく読みやすくなったの
だ。
 ということは、問い合わせ電話のピポパも、いずれ、ガイダンスの日
本語が理解できない、ピポパをやたら押し間違えるという世代が大量発
生するはずだから、それまで気長に待てばいいのかも。
 その時まで切り捨てられる少数派は気の毒だけど。
 ちなみに、この日の電話は千円以上足が出たので、次回に向けて
Skype電話を強く提案しておいた。
 機械が苦手な彼女にはハードルが高いとわかりつつ。