煙草ハラスメント

 症状から、間違いなくアレルギー。
 処方で治ったから、もはや決定的。
 内科医にそう診断されるも、客観的な検査はしてくれないので、アレ
ルギー科のある病院を訊ねたら、アレルゲン検査の結果は全項目が陰性。
 笑い話みたいな事実に遭遇したが、その後も通院している。
 たまに喉に痰がしつこく絡む症状が残っているのだ。
 原因は何。
 自然気胸で一週間入院した時は、医者曰く、
「ストレスか疲れでしょう」
 はあーっ。本気ですか。
 突っ込みたくなったが、まだ原因が突き止められていない病気だとわ
かると、そうか、医者は絶対あり得ないとは言い切れないかすかな可能
性を口走ってくれたんだと、むしろその誠意に胸を打たれることになっ
た。
 しかし、今回は、
「周りにタバコを吸う人がいたんじゃないですか」
 ああ、いました。
 ごろごろ、いた。
 職場が禁煙になっても、パーテーションで隠れているから見えないだ
ろうと、一服吸っては、すぐさま、蓋付きの灰皿に煙草を突っ込み、蓋
をパタンと閉めることを日に何十回と繰り返していた上司とか。
 別室のさらに上の上司にバレて以降、所定の喫煙所に行くようになっ
たけど。
 私のレントゲン写真に受動喫煙の影響が表われているんですって。
 クソ〜っ!
 アイツやアイツやアイツのせいだと思うと、全員とっ捕まえて、首を
絞めてやりたい。
 喧嘩でも外交でも、それぞれの側にそれぞれの言い分があるという眼
差しは忘れたくない私だけど、こと、この件に関して、私の加害者達に
正当なる言い分などあり得るだろうか。
 ニコチン中毒で病気になろうと苦しもうと、どうぞご随意に。
 けど、周りの人間を巻き込むな。
 タバコ会社は、煙がタバコから発生しないタバコを開発せよ。
 あるいは、噛みタバコだけを売りなさい。
 私の叔父は肺気腫になり、入院している間、当たり前だが禁煙を余儀
なくされるも、退院の日、叔母が迎えに行ったら、
「もうタバコを吸っていた」
 と呆れ返っていた。
 私が一番好きな叔父。
 それでも、自業自得で病気になったような人の医療費まで国民が分か
ち合わなきゃいけないのかなあ、と強く疑問に思う。
 ところで、近頃、喫茶店のドアを開けた途端、タバコの匂いが流れ出
てくることがあまりに多くて、驚いている。
 客はいなくても、タバコの匂いが染みついた店とか。
 なので。
 コーヒーやケーキは、レストランで食後に追加注文。
 あるいは道ばたに腰を下ろして缶コーヒー。
 とにかく、喫茶店は、誘われても、謹んで辞退です。