不寛容

全日空が、羽田空港発着の国際線を増便したというテレビコマーシャ
ルを始めたら、人種差別表現だと指摘され、放映が中止になった、とい
う記事を読んだ。
 金髪と高い鼻で外国人を表現したことが外国人達の反感を引き招いた
模様。
 もちろん、ニホン人は誰も、金髪と高い鼻だけが外国人だとは思って
いないだろう。が、だったら、いい加減、そんな旧態依然とした外人像
はやめてくれ、と意見されたってこと。ようやく、そういう会話が通じ
るレベルに達したと思ってもらえたのだとしたら、喜ぶべきかも。
 しかし、まずはそのコマーシャルを見たい。
 YouTubeにあった。
 見て良かった。
 見たら、記事を読んだ時とは全然違う感想になったのだ。
「日本人のイメージを変えちゃおうぜ」
 と言われて、
「もちろん」
 と答える際、金髪のかつらと高い付け鼻をつけていたニホン人の姿は、
私達ニホン人こそ異を唱えるべきように感じたのである。
 国際化とは、英語を日常的に使ったり、西洋人の外見に近づこうとす
ることではない。
 しかし、ニホン人のイメージを変えるには、ニホン人同士で英語を喋
るだけでは足りず、顔かたちまで西洋人にならねばならないというメッ
セージが、このコマーシャルには込められている。そう受け取ったのは
私だけかなあ。
 で、思い出した。
 去年、朝日新聞に「家族でつかおう」というキャッチフレーズで、一
面広告が掲載された。
 ガッツ石松が父親、母親、息子、娘に扮した広告。
 衝撃だった。
 日々最新の情報を取り扱っている、それも三大紙の一つですら、家族
を表現するとなったら、血の繋がりによる閉じた輪こそが家族である、
という立場に立ったのだから。
 父親似に生まれたため、両親の離婚後、母と共に母の再婚相手と暮ら
すことになり、母親にも義理の父親にも顔が似ていないことになるケー
ス。
 養子なので、育ての両親と似ていないケース。
 非配偶者間体外受精で生を受け、遺伝子の半分が実の親の片方と合致
しないケース・・・。
 そういう子達に理解がありそうな振りをしても、ひと目で親子と見て
取れるほどの自然血族を善しとする家族観。
 血の繋がりによる結束で子孫繁栄を目指すしかなかった大昔とは違う
のに。その頃だって、血は建前の場合も多かったのに。
 いっそ、子供が生まれたら、遺伝子検査で父母と子の関係を明確にし
てから戸籍登録という法律に改正すればいいんじゃないの、と思いたく
なる。
 ま、とにかく、私には、朝日新聞の広告の方が残念だった。