漫画も活字文化

 もし、西原理恵子の、膨大な文章の横にちょっぴり挿絵という作風も
「漫画」と見なされるなら、私が図書館で初めて漫画を借りたのは、二
年前ではなく三年前ということになる。
 彼女のその手の本ならば、分類に迷って図書館が購入してくれている
かもと期待し、図書館のホームページで検索すると、大正解。
 この時、あと一歩推し進めて、純粋な「漫画」も揃えてくれているか
も、と想像してもよかった。あるいは、著者名で検索するとか。
 しかし、図書館と漫画は親和しないと思い込んでいた私は、その思い
込みに従い、漫画を黙殺。
 翌年、「手塚がアトムで日本にアニメという産業を創り上げた」とい
う記事を目にする。
 漫画だなあ。買う気はないけど、読みたいなあ。
 であるなら、「無理」という心の声は承知で、図書館のホームページ
にアクセスするのが初手となる。
 いともあっさり、何ページにも及ぶリストが目の前に立ち現われ、私
は呆然。
 根拠のない自己規制ほど愚かしいものはないとつくづく思い知った。
火の鳥』『三目がとおる』『鉄腕アトム』『七色いんこ』『アドルフ
に告ぐ』などを読む。
 単行本だと、二種類の『リボンの騎士』を比較できるのもよかった。
 今年に入ってからは、ドラえもん
のび太と鉄人兵団』という映画のストーリーに埋め込まれた深いメッ
セージに言及する批評に興味をそそられ図書館でDVDを借りたあと、
この際ちゃんと知っておこうと、ドラえもんがこの世に送り出された第
一作を収めた本を探したのだ。
 おかげで、ドラえもん登場の第一作目は、対象となる読者の年齢別で
微妙に異なる内容となっていた事実を楽しんだ。
 ドラえもんサザエさんアンパンマンちびまる子ちゃんなどは、
第一作目を知らなくても、今の時点から楽しめる。
 それでも私は、第一作目を読んで初めて、その作品を「ちゃんと知っ
ている」気になれる。
 この手の漫画で「ちゃんと知っている」のは、ドラえもんだけ。
 ほかの漫画もいずれちゃんと知りたいが、目下は『新世紀 エヴァ
ゲリオン』と『機動戦士ガンダム The Origin』を読破中。
 これらも、ストーリーに隠された奥深いテーマについて読み解く批評
に読書意欲を刺激され、図書館に予約した。
 それにしても、どの単行本も、入手できるまでにかなり待たされるし、
自分の番が回ってきても、次に借りたい人の予約が入っているから、貸
し出し延長できない。
 漫画が、かくも優秀なる図書館の売れっ子芸者だったとは。