さりげなく最新技術

 先週、久しぶりにアレルギー症状が出た。
 それでも十二年前の発症当初よりましなのは、今は、体調の変化を感じた
ら、処方されている二種類の漢方薬を飲み、コントロールしているからだろ
う。
 だが、当時の最悪の時を上回る薬を大量服用するのに、喘息の人特有の喉
の鳴らし方が続く。
 幸い、週明けは診察日だった。
 ところが、受付で、
「今日は代診ですが、いいですか」
 と聞かれる。
「え、またですか・・・」
 前回は、担当医が入院して、二週間ぐらい休診になったのだ。
 休診期間中に予約を取っていた患者は、予約日の変更を求められた。
 偶然、私もその一人だったが、偶然、私の場合は、先生のせいでなく、私
自身がその予約日では都合が悪くなり、私から求めての予約日変更となった。
 それを電話でなく病院に出向いて相談したため、休診のことを知った。
 私が「また」と言ったのは、だから、また入院なのか、という質問である。
 今回は、新型コロナウイルスの陽性者になり自宅療養になったからだとか。
 代診にしたのは、前回の休診の際、いろいろな面で懲りたからだろう。
 私の予約は朝一番。しかし、私よりあとの予約時間の人達が次々診察室に
入っていく。
 一時間後、困惑して受付けで訊ねたら、
「先生に電話をかけているんですが、折り返しの電話がかかって来ないんで
す」
 アレルギーを発症したと私が話したので、私は担当医と直接話をしたいの
だと理解し、担当医から電話が来るまで私の診察を後回しにする対応が取ら
れていた模様。
「代診の先生でいいなら、次にお呼びしますが」
 そうしてもらう。
 と、診察室に入った途端、
「電話が繋がりました」
 電話の子機をスピーカー状態にし、診察室のみなが聞こえる状態で話すと
いうアナログさが、なんか笑える。
 症状を告げ、口を閉じても喉が乾くと言ったら、いつもの漢方薬に加えて、
うがい液を出してもらうことになった。
「お大事に」
 私から先生に、そう声をかけて電話が終わったのも、なんか笑えた。
 で、うがい液だ。
 頭の部分を押すとピュッと青い液が出る、その仕組みの精巧なこと。
 普通の鏡だと映らない広角の範囲まで見せてくれる新開発のFFミラーを
テレビで知り、すごいと思っていたら、さっそくエレベーターの横に付いて
いて、
「おおっ」
 これなら、エレベーターの中からでも、遠くから近づく人に、ちゃんと気
づける。
 人知れず、身近に、最新技術。
 だから残念に思う。
 スーパーマーケットの魚の切り身や肉類の容器だ。