現象に学ばない

 十二月にクリスマスケーキが売れるのは二十四日まで。二十五日にな
ったら大きく値引きしないと売れない。
 これに引っかけて、女性の二十五歳以降は売れ残り、と揶揄されたの
は過去の話だと思っていたら、男女の別なく、その法則が今も当てはま
ることが内閣府の分析結果でわかったそうな。
 二十五歳未満は「まだ若すぎる」「仕事や学業に打ち込みたい」とい
うのを理由に挙げる。そこを越えて三十四歳までのグループは「適当な
相手に巡り合わない」のが第一理由だと述べる。
 二十五歳を分水嶺に、独身の意識はこんなに変わる。
 悠長に構えていると、結婚したくなった時、そもそも結婚相手が見つ
からない現実に直面するってことなんだな。
 大企業のトップになった知人男性は、大学在学中に結婚が決まってい
て、二十六歳で二人の子持ちになっていたと、つい最近知った。
 成功する人の特徴として、人生の早い時期に生涯の伴侶に出会い、幸
せな家庭生活を築いて、家庭内に揉め事が起こらない、というのを読ん
だことがある。
 そうかあ・・・。
 だが、テレビで男性俳優が、
「二十代で結婚して、そのまま一生相手に惚れ込んでいられるなんて、
非常に難しい」
 と発言するのを耳にすると、そうよね、と思う。寿命はますます延び
るし、人の気持ちはコロコロ変わるものだから。
 ところが、今度は、インターネット上で、結婚後に本当に好きな人と
出会ってしまった男性達に取材した記事に出くわす。
 そういう人達のその後は、家庭を壊さぬよう秘めたる恋にとどめたり、
恋の相手と再婚すべく離婚するが、当の相手と別れたとか、実にいろい
ろなのだとか。
 じゃあ、結局、どうするのがいいのか。
 人として正しい生き方とは。
 心の拠り所をどこに求めればいい。
 死んだら天国や極楽に行けるという発想では救われないことはわかっ
ている。
 そんな私は、人々の実例から生きる指針を手に入れようと真面目に学
ぼうとするのに、混乱させられる。
 その姿勢こそが間違いだった、とようやく気がついた。
 現象は咲き乱れるもの。
 そこから本質を取り出す能力がないのなら、愛でるだけにすべきだっ
たのだ。
 今の人間の脳では、生の始まりのその前も、死んだあとのことも解明
できない。でも、私達は間違いなく存在している。
 それがきちんと腑に落ちるなら、そんな奇跡を生きていることに心が
震える。私は、その奇跡を、こんな風に大事に生きさせてもらいます、
と心が決まるだろう。
 それだけでよかったんだ。