二者択一の弱者

 先日、遠方から友達が来て、泊まった。
 その翌朝、服に着替える時に、
「あれ」
 と言う。
 一旦着たセーターの前後ろを逆に着直してから、彼女がぼやいた。
 服の裏側の選択表示のラベルは左手の側の見頃に付いているのが普通
だったはずなのに、近頃はそうでないのもあって困る。
 すかさず私は、
「そうやんねえ」
 強く同意。
 海外で縫製される製品の方が多くなり、ラベルはとりあえず付いてい
ればいい、という現地の人達の考え方がまかりとおるようになったから
か、などと憶測してみるも、着る時に混乱させられるから、寛大な気持
ちになれない。
 こういうささやかな違和感は、誰かに言ってみたいけど、それを発言
できる会話の流れが来ないと言い出せない。ようやく、友のぼやきで共
感し合えることになり、嬉しかった。
 もし、この彼女に飴を渡して食べてもらっていたら、今度は、私の困
惑に友が共感してくれることになっただろうか。
 外出先の緊急のカロリー補給用にたまに飴を持っていくことがあり、
封を切る時、いつも戸惑わされる。
 一つ一つ包んである飴の包装を破ると、小さな破片が本体から離れて
ちぎれる。
 その小さい破片を、何も考えずにポイッと捨てる人も多いのではない
か。そうして良い、と推奨するようなちぎれ方に作るのはなぜなのか、
と思ってしまうのだ。
 と言うのは、今は、包装の素材も大きく進化して、こう開けさせたい、
という方向でないと、どんなに力を入れても開けられないように作れる
ようになっているからだ。
 外袋が縦長の長方形の場合、私は、横方向に開けるのが好き。一度に
全部食べ切れなくても、その状態のまま保存できる。
 ところが、横方向に開けようとすると開けられない製品が増えた。
 中には、
「開けにくい場合は縦方向にお開けください」
 と書いてあったりするものまである。
 縦方向に開けられた方が良いと考える人達の理由はなんなのだろう。
そのぐらいは一度に全部食べ切る、ということなのか。残った物は別の
入れ物に移して保存する人達なのか。
 私は、ハサミという優秀な道具で私好みの開け方を粛々と遂行するま
でである。
 縦か横か、右か左か・・・。
 二者択一のどちらかに決める時、たまたまこちら側が選ばれた、とい
う場合も結構あるのかもしれない。
 エスカレーターは、関西では右側に立つ。
 ところが、京都駅はこれが逆。
 関西人の矜恃はないのかい、と嘆きたくなる私は、この件に関しては
郷土愛が剥き出しになってしまうらしい。