DVDならノーカットだが

 地上波よりBSの方が上、と思っていた。
 なんとなく。
 そうかも、と思える放送があった。
 映画の『ボヘミアン・ラプソディ』以降、クイーンのにわかファンにな
り、テレビをつけてクイーン関連の番組に遭遇すると観ていたが、そうい
う番組もなくなって久しい五月十九日。テレビをつけ、地上波に失望して
BSを見たら、クイーンの一九八二年六月五日のイギリスでのライブ映像
を放送している。
 その偶然に感謝して途中から見始めたが、映像がふいに断ち切られてコ
マーシャルに切り替わる。次に映像に戻るとシーンが大きく飛んでいる。
 この時点で、BSの方がコマーシャルの浸食率がえげつない、と学べて
いたはずの私。
 が、そのくだらぬコマーシャル中に一度だけ、平日の二時半から『マス
ケティアーズ』を再放送しているという告知があり、コマーシャルもこう
いう告知なら捨てたものじゃない、と苛立ちが和らいでしまった。
 翌日から、二時半にテレビの前に座れる時は、万難を排して、見た。
 と、地上波以上にコマーシャルがばんばん入る。
 しかも、深夜放送で『マスケティアーズ』を観た時にあったはずのシー
ンがすっぽり抜け落ちている。短いエピソードでも、それがないと、その
後の人間関係の理解に戸惑う。
 インターネットであらすじを探し、そのシーンはやっぱり本来あった、
と確認できたり、本筋に関係ないのであらすじでも言及されていなかった
り。
 そして、今頃、私は「ノーカット版」という言葉が存在する真意を理解
したのであった。
 テレビの衰退を言われて久しいが、ドラマやライブ放映のように、何か
をはしょったらもう、正しい作品ではなくなる物をコマーシャルでそうさ
れると、興がそがれ、所詮テレビはこの程度、と期待しなくなる。
 さて、私はテレビで『マスケティアーズ』を二回見たが、新聞の番組欄
ではなく、たまたまテレビをつけて放映を知るので、シーズン1を見逃し
ている。
 全シリーズのDVDを買おうかなあ。
 録画装置を有しておらず、iMACの本体からは光学ドライブの挿入口が消
えたので、まずは外付け装置を買う必要があるが、DVDなら私が目を奪
われてやまない登場人物の衣装もじっくり堪能できるだろう。
 ただ、一度観ただけでも細かいエピソードを覚えていたことを思うと、
ノーカットで繰り返し観られる状況が整ったはいいが、結局ほとんど見な
い、という事態になるやも知れず、決断しかねている。