人間の皮を被ったオオカミ

 レイプはしていないと自己弁明に躍起になる前に、酔っ払った女性を部
屋に連れ込んだというだけで駄目でしょう、と思うのは私だけか。
 元TBS記者の山口敬之が当時就職活動中だったジャーナリストの伊藤
詩織に合意なき性的暴行をしたとして、十二月十八日、東京地方裁判所
ら三百三十万円の賠償を言い渡された件である。
 書く前に、一応もう少し広く調べてみたら、テレビで語る人達の中に少
なくとも一人、まっとうな事を述べた人がいた。
 玉川徹。
 十九日の『羽鳥慎一モーニングショー』で、彼は述べたそうな。
 なぜ、山口敬之は、喫茶店ではなく寿司屋、居酒屋と伊藤詩織を連れ回
す必要があったのか。
 彼女が酩酊したと言うけれど、酒を飲んだだけでそうなったのか。
 本当にそうなら急性アルコール中毒を疑い、病院に連れて行く、そうし
ないなら家まで送ると考えるのが普通だろう。
 まったく、そのとおり。
 けど、私は、もっと手前の部分の山口の行為についても違和感を抱いた。
 彼女の飲むピッチが早すぎるなら、やんわり諭してこそ大人の、紳士の
対応。
 それに、一緒に同じように飲んだはずだろうに、なんで山口一人、しら
ふなんだ。
 変よね。
 そして、仮に彼女は飲み過ぎたが急性アルコール中毒ではないと山口が
判断したのだったとして、そんな彼女を、なぜホテルの自分の部屋に連れ
込んだ。
 なぜ、彼女のために一室取ってあげなかった。
 ここに山口の下心が表われている。
 だってそうだろう。
 彼女が急に吐き気がして、トイレに駆け込むかもしれない。
 気持ち悪くなって、服を脱ぎたくなるかもしれない。
 その時、そこに男の自分がいたら迷惑だと想像する能力が、なぜ山口に
はなかったのか。
 意識のない彼女と性行為をするために同じ部屋にいる必要があったから。
 介抱のためだったという言い逃れが通じると思っているのは浅はかな男
達だけ。同じ部屋にいる必然性はない。
 だからアウト。
 けどさあ、その卑劣さを決行するのなら、せめて彼女のために部屋を取
ってあげてよ。
 それでもレイプはできる。
 でも、万一のためのアリバイは作れる。
 ところが、その金をケチる。
 最低。
 まさか食事を奢ったからいい、なんて言わないよね。
 男達よ。
 酔わせて自分の空間に連れ込んだ時点で、疑われる立場になります。
 それは常識。
 なので、酔った女が部屋に入りたがっても、入れてはいけない。
 君子危うきに近寄らず。