起こる事は必然でも

 奇遇を初めて経験した時は、この再会には何か意味があるのかも、と考
えようとした私だったかもしれない。
 しかし、国内はもとより海外や国際線の飛行機の中でもそういうことが
あると、そうか、私は今この人と出会う必要があったんだ、と理解して、
おしまい。
 もちろん、どちらかがそこに現われるのが一分でもずれていたら遭遇で
きなかったので、神秘ではある。
 起こる事に意味はなくても必然だったのかも、と思えてくる。
 でも、それなら、たった一回でいいから、自分のその後の人生が大きく
変わるきっかけとなる誰かとの遭遇の方がいいなあ。
 そういう体験した人の話を聞くと羨ましい。
 隣の芝生は青いのだろうか。
 私の偶然は、肌を撫でるそよ風みたいだ。
 ただ、今日、歯医者に行って、私は、思い出していい気分になることを
選んで記憶している気がしてきた。それは私自身を褒めたい。
 検査しても異常はないのに歯がぐらつくのは、寝ているあいだに歯を食
いしばりすぎるのが原因であることが多いらしい。私の奥歯の表面には歯
ぎしりの跡がある。そう指摘してくれた歯科医で就寝用のマウスピースを
作り、今使っているのはもう何代目になるだろう。
 今日はマウスピースのすり減りの修正と歯垢除去などの定期検診の日だ
った。
 歯の状態は良いと診断された。
 けど。
 以前、検診の度に左下の奥歯のあたりが重たい感じがすると伝えたが、
レントゲン撮影でも虫歯が認められないのか、あるいは歯を削るにはまだ
早いという診断なのか、訴えは捨て置かれた。
 強く言って虫歯治療してもらうことになったら、
「思ったより中の方で大きく広がっていました」
 と言われ、深く大きく削られた。
 もっと早く処置してくれていたら歯の損失は少なくて済んだのではない
かと思うも、歯医者の判断に頼るしかないのが歯痒い。
 今年は、右の下の奥歯のあたりに舌が行くと、舌が傷つくようになった。
 定期診断の直前で、行った時にそう告げたが、さらっと診て、これも捨
て置かれた。
 でも、舌が当たる度、針先に触れたように痛い。
 鏡で見て、その場所を特定し、再度行ったら、写真を取って、歯が欠け
ていることが判明。処置してくれた。
 なんかなあ、と思ったことをすっかり忘れていた。
 歯医者を変えるべきかという考えを却下したら、忘れたみたい。
 起こる事が必然なら、嫌な事も必然で起こっていることになる。
 きのうは、フランスへの郵送に関してだった。