フランス事情

 配送状況の追跡ページで、フランスの知人夫妻に送った荷物が二日続き
で「保管」表示になり、不安だったが、メールでやりとりして、彼らが四
日後にハンガリーから帰宅するとわかり、月曜日を待った。
 週末に郵便配達はないはずだから。
 ところが、月曜日も配達状況の表示は「保管」。
新型コロナウイルスのPCR検査が陰性だったら、土曜日に帰る」
 ということだったので、もしや陽性だったのか。
 再び不安に襲われる私。
 翌日、無事の帰宅と、郵便局に行って荷物を受け取ったというメールが
来た。
 受取人が自ら郵便局に出向いたら、追跡サービスの端末機器に配達完了
の入力をしなくていいというのがフランス流なんですかい。
 そう言いたくなるが、こういう「抜け」が人間味となる場合がある。
 パリからモンサンミッシェルへの旅行の帰りに、駅に早く着いたので、
新幹線の予約を変更したい。
 窓口で切符を見せたら、カップル用の切符は割安な分、変更できないの
が条件だと、知っていることを指摘されて、あえなく撃沈。
 けど、フランス人気質に期待して、私は、
「あっちの窓口で聞いてみる」
 と言うのも、そこの係員は風采のあがらない年配男性だったのだ。
 掛け合ってみたら、うふふ、あっさり変更してくれた。
 そして、別の折には、同じく新幹線だが、友人知人が住む地方に向かう
パリ発の車内でのことだ。
 事前に電話で友人と話をし、帰る日を変更することにしたので、
「その手続きは降りた駅ですればいいのですか」
 と車内を見回りに来た乗務員に聞いた。
 すると、時刻表を調べて、私が乗りたい新幹線に、私と同じ駅から勤務
する予定になっているので、
「駅で僕を見つけてくれたらいいですよ」
 私は、手続き変更に取られる時間を惜しんで、彼の好意を信じることに
した。
 駄目なら、駅で順当に手続きすればいいんだし。
 果たして、無事、彼と再会し、持っている切符で乗車できた。
 ただ、彼はパリの手前の駅で降りる。
 そこからパリまでのあいだに別の乗務員に咎められたらどうしたらいい。
 すると彼は、切符の裏に、そういう詮索は無用、というような言葉を走
り書きし、サインをしてくれた。
 私は、お礼に彼の頬にキス。それも奮発して左と右に一度ずつ。
 杓子定規が必ずしも良いとは限らないと教えてくれるフランス。
 その懐の深さ。
 しかし、良き臨機応変さが「抜け」となることもある。
 どちらも愛するしかないか・・・。