詰め放題

 タオルの詰め放題をやっていた。
 一番数が多いのは、ぺらぺらのハンドタオル。
 明らかにセール品、と見えそうだが、確かにそうでも、ここまで薄いのは
見たことがない。いざ、ほしい、となったら、どこにも売っていないだろう。
 ビニール袋を手に取り、高齢女性の横に立つ。
 彼女は、これだけ詰められたら充分、と思ったのか、隣接のワゴンに移動
した。
 そのワゴンのひと所はタオルがなくなり、ワゴンの底が見えている。そこ
にビニール袋を置けば、上からタオルを押し込む力が分散しない。
 彼女はそうした。
 私は、そろりと彼女の横に移動し、タオルを物色しつつ、彼女の手元も視
野に入れ、上の口紐を結ぶのに手こずる様子が見えると、
「やってあげましょうか」
 と声をかけた。
 私も、まずはタオルを上から押し込む。
 上部に空間ができる。
「まだ入りますよ」
 彼女が目の前のぺらぺらのタオルを数枚取って私に渡す。
「そこら辺をちょっと拭くのに良さそうですしね」
 と彼女。
 考えることは同じである。
 私は、再び、全身の力で押し込む。
「まだいけますよ。ただ、持って帰るのに重くなりますけど」
「もうこのぐらいで」
 と言われてやめた時も、まだ入れられる余地はあった。
 こういう詰め放題では限界を極めたい。そこに詰め放題の醍醐味を見るか
らだが、その精神で人にもお節介したくなる私。
 お祭りだもの。
 お祭りだから、張り紙に「ビニール袋の口をきっちり閉めてください」と
あっても、若干口が開いた状態なら良しと見なす。
 実際、レジでも見逃してくれる。
 しかし、彼女が気にするので、
「大丈夫です」
 私は請け負った。
 そんな私の成果は、普通のタオルが四枚、ぺらぺらハンドタオルが四十六
枚。税抜き千円である。
 一位かな。
 だって、他の人達はみな、詰め方がお上品。
 どうして。
「あっ」
 握力の問題か。
 私は、アレルギーで定期的に通院しているが、毎回、まずは体組成計測定
で体重や筋肉量、水分量、体脂肪率などを暴かれる。
 握力測定はない。
 なのに先日、担当医から握力を問われ、なぜに私に答えられましょうや、
と言いたかったが、答えられた。
 半年ほど前に、市の保健所の出張イベントで血圧と握力を測ってもらい、
その数値を覚えていたのだ。
 握力で何がわかるのか。
 私の問いに、
「いろいろなことがわかる」
 とぼかした答えしか返してもらえなかったが、握力が高いといいことがあ
るのか、という疑問の答えは、自力で見つけた。
 こういう詰め放題の時に役に立つ。