忘れることを恐れない

 先方にその用紙を渡したら控えがなくなるので、スキャンして、パソコン
に保存する。
 一枚だからあっという間。
 のはずが、
「ディスクに書きこめません」
 と警告が出て、保存できない。
 スキャナーが壊れたのか。
 だが、ドライバーに何らかの不具合が起きたのかもしれないので、メーカ
ーのホームページからドライバーをダウンロードして、スキャンし直すが、
また警告。
 アップルケアに問い合わせた。
 共有画面にして、私のiMacの画面上で指示される場所を開け、内容を確か
めてもらったりしたのち、再度ドライバーをダウンロードすることになった。
 私が一人でした時より時間がかかる。
「その時ちゃんとダウンロードできなかったのかもしれませんね」
 今度も駄目。
 ところが、保存先をデスクトップから書類に変えると、保存できた。
 ・・・。
 デスクトップ保存だけできないのは妙だが、一応保存はできるようになっ
たし、すでに一時間以上経っているので、礼を述べて電話を切った。
 あとは、スキャンすべきをスキャンしたら本日は終了。
 えっ。
 保存先を書類にしたのに、保存できない。
 半泣きで、またアップルケアに電話。
 解決した。
 どうやって。
 思い出せない。
 担当者から、デスクトップにファイルが多すぎ、そのせいで起こったこと
かも、と最後に仄めかされ、それまでのやりとりが頭からすっ飛んだのか。
 スクリーンショットを取ったりスキャンすると、デスクトップに蓄積され
る。
 それらを一つ一つ適正な場所に移す作業が追いついていないことはわかっ
ていたので、この際すべてを一掃することを決意。
 ファイルを移動させるが、記事のタイトルを読んでも内容が思い出せない
のは捨てる。
 内容が思い出せても、その情報が必要になる未来の時点で、その時の最新
情報を探すことになりそうなら、それもゴミ箱へ。
 ということは、保存する価値があるのは、未来になっても変わらぬ情報、
過去の事実。
 それとて、将来、新たな視点や発見により、今とは違う過去の事実に生ま
れ変わる可能性がある。
 今、興味を惹かれて、今、見聞きしたら、それで完結。
 でも忘れる、ということに関しては、仕事ではないんだし、忘れても困る
ことはないはず。
 それよりも、忘れてはいけないことを忘れないようにする方が大切だろう。
 だが、それすらも忘れていた自分自身に気づく時、忘れないことに躍起に
なるより、今この時を精一杯生きるしかないんだなあと思い知らされる。