初・点滴

 歯医者の予約を延期してもらった。
 悪くなったら喘息になる、というアレルギー持ちの私は一月に症状が出た。
 漢方薬をのむも治まらず、通常以上服用するが効果がない。
  さらに症状が悪化した一月末には薬が切れかけ、一週間後の診察日まで待
てず、こちらは予約を一週間早めてもらった。
 漢方薬と吸入剤を処方されたが、
「点滴しとく~?」
 この軽い言い方は患者に深刻さを感じさせないためだろうか。
「えっ、栄養は足りています」
 ちょっと調子が悪くて医者に行き、自ら点滴を求める患者がいると聞いた
ことがあり、そう見られたのか、と思ったのだ。
 私の場合は、肺に繋がる気道の炎症を抑えるためだった。
 それも、まずは手動で速やかに気道の炎症を鎮める薬を入れ、そのあと自
動に切り換える。普通は初めから全ての薬を入れて自動で点滴するらしく、
それほど私の症状は早急な処置が必要だったらしい。
 点滴の針を刺してから、痛くないかと看護婦さんに問われ、
「痛いです」
 だって、針が入っている場所を感じるし、その周辺もちょっと違和感。
「ちゃんと血管に入っているので、もう一度刺し直すのはもったいないんで
すけど・・・」
「あ、いえ、感じる、と言うだけで、これを感じないというのは鈍感なんじ
ゃないかと思っただけです」
 そういう私は敏感かというと、突発的に咳が出て発話が途切れるのは鬱陶
しいが、別にしんどいとは感じないので、皆からしんどそうと見られるのが
解せないとしたら、鈍感、ということになる。
 点滴で気道の狭窄が改善されると楽になったと実感。私は単に悪い体の状
態に慣れてしまっていただけかもしれない。
 念のために一週間後にも受診、ということになり、また点滴。
 この時は、手動から自動に切り換えられた際、
「痛いです」
 点滴が漏れたらしく、その時の痛みを確実に学んだ。
 それから日が経った。
 今は口を閉じていても喉が渇く感覚はなくなったし、咳も思い出したよう
にしか出ない。
 でも、歯医者で診察台に座り、大きく口を開いて掃除してもらっているあ
いだに出たら困るし、出ないでほしいと思い続けるのは緊張するので、今朝
になって延期してもらった。
 頭の回転も悪い。集中しようとするのに、できない。
 一度発症したら快復まで時間がかかる。
 発症したくない。
 去年は発症しなかった。
 あっ。
 去年は新型コロナ対策でマスクをしていた。
 冬はマスク。そういうことか。
 来年は忘れない。