占った

 同僚に頼まれて、占いをした。
 プロじゃないので、その場ですぐには結果が出せない。それにしても、
頼まれてから随分待たせてしまった。普通は、何であれ、さっさと片づ
け、精神的にゆとりを持ちたいタイプなのに、なぜ。
 これにより、私にとっての占いとは、自分自身を知るためのツールで
あったと気がついた。
 私って何。どういう人間。どう生きればいい。あの人と私の関係は。
 自己流なので、種類を問わず、信じられそうだと感じたものは、垣根
を越えて、あまねく受け入れる。それらを総合して判断する。
 プロなら即刻破門されそうなこの浮気性方法の良いところは、これは
この占いでしか出せない内容だ、とか、こういうことはこれでもあれで
もよく似た結果として出てくるなあ、など、それぞれの占いを比較分析
できることだろうか。そして、結論は、万能の占いはないってこと。
 「29歳人生転機説」。
 人にはそれぞれ人生上の転機が訪れるが、29歳というのは誰にも等
しく訪れる一大転機の時期である、というもので、占いとは無関係の人
が経験則として語ったりするけれど、これなどは、西洋占星術土星
運行で説明できる。生まれて29年経つと、土星が天空を一巡して、元
の位置に戻ってくるのだ。
 29歳ぐらいから人生を悩んだりし、32歳ぐらいまでに行動を起こ
すというのが「29歳人生転機説」。そこを素通りしてもかまわないが、
そうすると、その後にそれに匹敵する大波が必ず来るとは言えないので
ある。 その人次第。
 さて、同僚への報告は、良いも悪いもひっくるめて「当たってる」と
喜んでもらえた。そんなに親しくない相手の方がよく当たる気がする。
見ず知らずの彼のことも、彼女と彼との関係もビシバシ当てた。
 しかし、私自身に「占った」という爽快感はない。こういう時にはこ
う読み解く、という占いの第一人者の教えを、ただ、そのまま受け売り
しているにすぎないからだ。ただの一つも、真に確信に満ちた言葉はな
い。霊感というか直感というか、この道に不可欠のものが私に絶対的に
欠けている証拠であろう。
 模写しかできない画家も、こんな気分なのだろうか。
 そんな私の気持ちを知ってか知らずか、同僚の言葉----
「これで踏ん切りがついたわ。やっぱり、付き合うんだったら、結婚向
きの人じゃないと。ねえ、別の人と占ってくれる」