フランスがいい!

 パリにいた時、役所の事務手続きは最低3回通わないとうまくいかない
と聞いていて、実際、そのとおりだった。
 TGV(新幹線)のペアチケットで旅行をし、帰りの列車を予約より早
めようと窓口に並んだら、「それはできないのが条件」と突っぱねられた
が、もしや、と思って別の窓口で頼んだら、すんなり変えてくれた。さす
個人主義の国。いや、こういうところで個人主義はまずいか。
 こんな時、いつも心に浮かぶのは「ああ、これが日本なら」という望郷
の思いであり、かつ、国民的優越感である。しかし、単なる身びいきだっ
たのだろうか。
 今月から、いよいよ私もブロードバンドに乗り出した。遅ォ〜ッ。いや、
以前、ADSLを契約したあと、マンションの建物にすでに光が来ている
というのでアウチになり、その後、マンションで契約会社が決定されたの
だが、その時には気持ちが萎え、見送ってしまったのだ。
 しかし、突然、その気になり、フリーダイヤルに電話をした。
 説明を聞き、ひと月の契約料を聞く。
 あるいは、この一度の電話で話が済んでいればよかったのかもしれない。
 けれども、提携プロバイダーの選択に悩み、再度電話をかけ、ついでに
金額を確認してしまった。
 すると、別の担当者が別の金額を答えた。
 え、どっちが正しいの。不安を解消すべく、時間を置いて電話すると、
別の担当者がまた別の金額を答える。
 まあ、よかろう。契約書には正確な金額が書かれているはずだから。
「もちろん、契約書はあるんですよね」。しかし、折り返し回答の電話を
するという電話がなかなかかかってこず、業を煮やしてこちらからかける
と、「今かけようとしたところです」と男が出て、「契約書はありません。
お客さんのような人はプロバイダーの方から申し込んでください」。
 私はよっぽど契約を止めたかった。しかし、ブロードバンドにするには、
そこと契約するしかない。集合住宅の悲しさである。
 すがる思いで親会社に電話をしたら、光担当の男が、「マンションはこ
れこれの子会社が担当なので」と、私が数日来連絡しまくっている会社名
を挙げ、そこから電話させると言うのだが、まだ営業時間中なのに、「電
話は明日以降になります」。
「じゃあ、いいです」。私は押し馴れたフリーダイヤルに電話をして、契
約料金不明のまま契約をした。
 ありがたいことに、契約書はあった。
 ただし、一般的な契約料金額が記載された印刷物が入っていて、「ご家
庭により、記載の金額と違う場合もあります」のただし書きのみ。
 今、私は、第一回目の引き落としの日を戦々恐々として待っている。