のめり込むタイプ

 高校三年の時の同級生が海外赴任するというので、壮行会に出席した。
 去年の学年同期の同窓会にすら出席しなかった私が、自分のために来
てくれた、と、彼が、早速、メーリングリストに感想を載せた。
 そうなのだ。進学校だがバンカラ気質のみんなと過ごせた三年間は至
福の時代であった。でも、過去を懐かしむにはまだ早い。今は、心の拠
り所ができたことを喜べたら十分、と同窓会はパスしたのだ。
 しかし、みんなの思いは違ったようで、総勢二百名を越える同窓会だ
けでも六時間、続くクラス同窓会から五次会までを含めれば驚異の記録
となった再会をきっかけに、関東・ヨーロッパ・アメリカの各支部はで
きるわ、テニス会は発足するわ、事あるごとに集まる状況が開始した。
 その報告は、即日、写真入りでホームページに掲載される。メーリン
グリストも盛況で、私はとうとう専用のフリーメールを割り当てざるを
得なくなった。
 おかげで冒頭の彼の壮行会を知ることもできたわけだが。
 これだけは出席しようと思ったのは、彼からメーリングリストで「一
年の時も同じクラスだったよね」と個人的メッセージをもらったのに、
黙殺したことが気になっていたからだ。
 だけど、同じクラスだったって? そうだったの。で、何組?
 こんなとぼけた私は、当日、一度も同じクラスになったことがない人
を思い出せないことに恐縮したりして、海馬の出来の悪さを暴露してし
まった。
 それでも、一応“今”の私を披露したから、再び、冬眠させてもらう
わね。
 ところが、デジカメでパシャパシャ写真を撮ったら、それを編集する
世話人に送る必要が生じ、そういうやりとりを衆目監視のメーリングリ
ストで行なうと、「僕も一年の時同じクラスだったんだけど」と書いて
くる者がいたりして、突然、メーリングリストの連続出場者に躍り出た。 
 家族は背景へと押しやり、友達関係こそが人生のメインイベントだっ
た高校時代に逆戻りした感じで、四六時中、そちらに意識が向かう。
 独身の私はいいけど、妻子持ち、夫子持ちのみんなは大丈夫かい。
 壮行会のあと三次会まで付き合った元女子もいたようだが。
 いや、ひとのことより自分である。
 弁当用の具材を買い忘れ、今日は缶詰をアレンジしてしのぐことにな
った。