ブロー嫌い

 職場の男性が、夜、髪を洗って乾かそうとしたらドライヤーが壊れて
大変で、わざわざSNSソーシャル・ネットワーキング・サイト)に書
いたぐらいだったとか。
 そう、と頷きつつ、私は半ば軽蔑の眼差し。
 ところが、その話を昼休みにしたら、私vs私以外の女性という対立構
造になった。
 みなは言う。髪を洗ったらドライヤーで乾かさないと、髪が濡れたま
ま寝ることになるし、朝起きたら、とんでもない所からとんでもない方
向に髪の毛が撥ねることになる。
 だけど、私と違い、いわゆる一般的日本人の直毛なのだ。そのどこが
撥ねるってのサ。笑わせるじゃない。
 もっとも、私は、彼女達の主観的な言い分ではなく、洗った髪は強力
なドライヤーの熱で一気に乾かした方が髪のためによい原理を知ってい
て、それを開陳し、ほうっと感心を集めた。
 蘊蓄(うんちく)だけは一人前でも実行が伴わない私であるが、ここ
ぞ、という時には、外出前にブローして髪を整える。たとえば会議の受
け付けの日とか。
 そう言ったら、「やってきてぇ」と一斉に声が上がった。
 そして、それだけ天然だったら、ブローしたら「もっと」綺麗になる、
とか、日頃、口に出せなかった本音が堰を切ったように出てくること。
 んもう、わかりました。
 私は約束どおり、ブローして出勤した。
 一人だけ、年配の女性が、「でも、私は、あれはあれで好きだったけ
ど。個性と思ってた」と、きのうまでの私を高く評価する発言をしてく
れたが、ほかのみんなは、すべからく「やっぱりこの方がいい」。
 朝、ブローのために奪われる時間を思って溜め息つく私。なんか間違
ってる? 
 しかし、まあ、おだてに乗って、しばらく続けてもよいかなあ。
 でも、夜のドライヤーだけは、いくら掻き口説いても無駄だからね。
 と息巻いていたのに、あっさり決意を裏切ってしまった。
 寒暖の差が激しすぎる春の気まぐれに翻弄されたものか、風邪をひき、
髪を洗いっぱなしにできなかったのだ。
 タオルで髪は乾く、と言い張っていた私だが、完璧に乾いたと言える
状態にまではならないと発見してしまったから。
 今回は、仕方なしの特例!
 って、何、ムキになって弁解してるんだろ。