きょうの健康

 人は外見でないという建前がすべてにまかり通ればよいのだが、クラ
シックバレエのプリマドンナは、ひっつめ髪にした時、端正な顔立ちに
なれる人というのが必須条件となるように、分野によっては容姿を無視
しきれない場合がある。
 なんでそんなことを思ったかというと、偶然、NHKの『きょうの健
康』を見て、びっくりしたのだ。
 模範体操をしているのは、三人の若い男性なのだ。体操するのは女性、
と思い込んでいた身には、なんとも衝撃的。でも、そういう固定観念
植え付けてきたのはNHKだ。そのNHK自身が殻を打ち破ったという
ことか。なかなかいいじゃない。
 ところが、私は、なんか落ち着かない。
 なんでだろう、と見ているうちに、彼らの容貌に理由があることがわ
かった。そして、私は、初めて、あの体操のお兄さんの偉大さを真に理
解するに至った。
 佐藤弘道(ひろみち)お兄さんは身体能力が抜群。ところが、そうい
う人にありがちな、押しつけがましい男臭さがない。ちゃんと二児の父
親ではあるし、三十八歳であの容姿と知ると、そういう人こそ夫にほし
い、と誰だって思うだろう。
 でも、もし身体のラインが如実に出るスポーツウェアの異性が、そこ
にいるだけでミョーに女心をくすぐってくるとしたら、ちょっとまずい。
そういう時間じゃあないんだし。
『きょうの体操』の面々も、爽やか路線の人達だ。
 ただ、血圧を下げるだとか膝の痛みを解消する運動を紹介する番組な
ので、『おかあさんといっしょ』よりは基準が緩やかなのかも。そこに
女としての私の感覚が敏感に反応したのかなあ。イケメン、とは言い切
れないが(ごめんなさい)、イケメン路線の三人衆。つまり、体操より
も顔に意識を向けさせてしまう程度に顔の自己主張が強いってこと。
 と言うことは、セクシャリティを限りなく無にして、なおかつ好感度
の高い人は本当に希有(けう)ということなのか。ますます、弘道お兄
さんのすごさがわかってきた。
 でも、まあ、三人衆が相手にするのは、子を持つ親でも、もう成人し
た子を持つような世代なので、ちょっとぐらい男を意識させてくれる方
がこっそり楽しいかも。
 だけどなあ。やたら手を挙げる動作が多いのに、タンクトップってい
うのは、どうなんだろ。もじゃもじゃに目が引き寄せられてしまい、セ
クシーと言うより、その反対で、ちょっと厄介なんだワ。