今いる所は、好きですか

 いつもの見慣れた光景に、突然、淡いピンクが立ち現れて、ああ、そ
れもあれも桜だったのね。
 今年は、二月に雪が降ったりして、関東よりあとの桜の開花となった
が、咲いてからは、風もなく、きのう雨が降るまでひたすら満開が続く
という、素晴しい年になった。
 中でも最高のお花見日和は、日曜日。
 遊びに来た友を誘い、近くの公園に行ってきた。
 桜の名所じゃないけど人出は多いんだろうなあと身構えていたら、そ
ういうことはなく、桜の下の宴会も、春の休日をのんびり過ごす人達の
慎ましさが、すこぶる好感度。
 来年も行きたくなった。って、徒歩十分もないのに、そこに行くのは
二度目なのだ。
 それにしても、こんな近場で桜を満喫できるなんて、さすが桜の国だ
なあ。
 そう思い、ますます住んでいる場所が好きになった。
「住めば都」と言うから、別の土地に住むことになったら、それなりに
順応できるとは思う。でも、関東だったら、ちょっとストレスかなあ。
 NHKの朝の連続小説『ちりとてちん』を、私は見ていないが、母や
友人知人は見ていて、病みつきだったらしいが、関東地区では視聴率が
過去最低だったとか。一方、私には単にその時間帯の穴埋めのようにし
か見えない『笑点』が、関東地区で高視聴率を叩き出すお化け番組だと
言う。
 もっとも、『ちりとてちん』も、関東の大学に進んだ友人達には受け
なかったようなので、「住めば都」で、私が関東に住めば、『笑点』の
面白さに開眼する日は来るかもしれない。
 ではあるが、必然に迫られてもいないのに、無理に眼中にない方面へ
の興味や関心を開拓することはなかろう。
 東国原知事で有名になるまでもなく、宮崎は知っていても、宮城県
今もって地理に不安が残る私だが、それもいいんじゃないの。
 人生は短く、能力には限界があるんだから。
 能力の限界というか、特徴というか。
 私は、旅でも、同じ場所を何度も訪れるような旅をすることが多くて、
なんでかなあ、と我ながら不思議だったが、今いる場所で満ち足りたい
気持ちと根は同じなのかもしれない。
 今いる場所が気に入ったら、そこに土着していいと思い、「ここでは
ないどこか」に強烈に憧れない。
 良い悪いでなく、そういうタチってこと。
 つまりは度しがたく「出不精」ということになりそうだが、無い物ね
だりは無意味なので、これからも、今いる所、いる時間に満ち足りてい
くとしますか。