1GBのSDカード

 幼い頃に住んでいたアパートが取り壊され、その一帯が再開発される
らしいと友から連絡があったのは、今年の初め。
 彼女は、結婚後もその町に住んでいる。
「桜も全部切り倒されるそうだから、よかったら、桜の季節に来ない?」
「じゃあ、ついでに、通っていた幼稚園なんかも見てみたいなあ。付き
合ってくれる?」
 で、一ヶ月前。
 駅を降りたら、彼女とダンナ。
 昔、彼女の誕生日を祝うべく約束のレストランに行ったら、見知らぬ
男性がのうのうと彼女の横に控えていて、そんな不意打ちでそのダンナ
と対面させられた私には、なんだか懐かしい既視感である。
 この日も、人見知りする彼女が、緩衝材にダンナを手配した模様。け
ど、私達、幼馴染みよねえ。
 一方のダンナは、歳を取って病院通いになっても、ばあさん達に混じ
って喋りまくりそう、と本人自身が予想しているぐらい、「初対面、即、
友達」体質。当然、仕事は営業職。
 人物写真を撮る時に、そんな彼が来てくれたおかげを一番実感させら
れた。
 私と友達。
 友達とダンナ。
 そういう写真は、のちのち、ああ、この時は三人で来たのだなあ、と
いう記録になってくれる。
 だが、このダンナが少し高さのあるコンクリートの上にカメラを置い
てセルフタイマーで私達三人を撮ろうと苦心した時、
「私と、友達のダンナ、だけはないんだ」
 と気がついた。
 彼と私がカメラを持ってきていたのだが、ごく自然に、しかし考えて
みると実に作為的に、そのツーショットを避けている。
 やっぱり、倫理的にまずいのか・・・?
 それはさておき、送られてきた写真を見ると、カメラの傾きに限界が
あったようで、人物が上に大きく偏り、地面が下半分に無駄に大きく広
がる構図。
 それは、パソコン上でいかようにも修正できる。
 ただ、そのことが頭の隅に引っかかっていたのだろう。
 AmazonでSDカードを買い、再度、同じSDカードを買い、次に60g
の超軽量かつ超ちゃっちィデジカメスタンドを買うと、値段に見合う機
能は認められたので、彼らにプレゼントしようと閃き、実行した。
 こんな買い方では送料の方が高くつきそうだが、「全国無料配送キャ
ンペーン」が味方してくれたのだ。
 現物を見ないまとめ買いは無謀だと警戒する。
 そんな私なら、なぜ、普通の店で買わない。
 1GBのSDカードはどのメーカーでも生産終了で、店頭から消えて
いたのだ。
 そのショックたるや、今だに私の中で尾を引いている。