時の速度

 ハイキング用の靴を買い、履き慣らそうとしたら、靴擦れし、「ガー
ゼ付き絆創膏」を貼るも、一足ごとに痛みが「ズン」「ズン」と神経を
伝わってきて、颯爽と歩くどころか、へっぴり腰。
 靴を手に取り、ながむれば、かかと上部の靴本体は、その上を硬い物
質で補強されていて、歩きやすさの工夫なんだろうけど、そのせいで靴
擦れになるんじゃないの。
 ってことは、永久に靴擦れ?
 ところが、んんん・・・?
 今日履いたら、痛くない。
 足の靴擦れがほぼ完治したとは言え、唐突に問題が解消して、狐につ
ままれたような気分。
 これが、時の流れの偉大さなのか。
 時は流れる。
 心配しなくても、流れ続ける。
 その流れる速度は一定。
 ならば、時の経つのが速いとか遅いとか、その時々の感情に振り回さ
れて勝手に決めつけることなく、常に、時の速度と正しい心の歩調を保
てる自分自身でいられること。
 先月、iMacを買い直す必要に迫られた時、私は「三週間」という時の
長さをどうとらえるかで迷った。
 三週間後にマイクロソフトのOfficeの新製品が発売になる。
 三週間後か。じゃあ、そのあいだはワードとエクセルを使わない方法
で対処し、三週間後に新製品を買うことにしよう。
 ソフトのインストールはいつも不安で心がドキドキするので、なるべ
く最小限にとどめたい私なのだ。
 しかし、三週間は結構長いゾと考え直し、発売中のを買った。
 その後、三千円で新製品に優待グレードアップしてくれるキャンペー
ンに申し込む際は、案の定、キャンペーン事務局に電話で問い合わせな
いと登録が完了しない事態になったけど、新製品が届くまでの期間、
Officeを使える状況にしたのは正解だった。
 ところで、登録したのは、新製品の発売予定日の前の週で、発売日に
は発送してもらえますよねと、電話の際に確認したら、
「登録順の発送になるので、そうとは限りません」
 とすげない返答。
 が、発売日の翌日、宅配便が届き、そうなると、「な〜んだ。優待申
込者はそれほどいなかったんじゃないの。キャンペーンの売上げは好調
ですか」と聞いてみたくなるし、朝日新聞に『プレイボーイ』の広告が
載るようになったのには、「そこまで経営状態が逼迫してきましたか」
と聞きたくなるし、思考能力って、時に、自分でも驚くようなことを発
想するものなんですね。
 さて今。
 私が時を見る目に私情が入っていると感じているのは、ダイエットに
関してだ。
 実感では、体重が落ちる速度が、時の速度と比例しない。