選択するというストレス

 ささやかなことでも、自分の意志で決める。
 そこに人としての自由があり、幸せがある。
 人生の重大な場面ではなおさらのこと。
 しかし、
「こうしろって決めてくれたら、そうします」
 占った直後にお客さんからそう言われることが多すぎ、嫌気がさして
占い師を廃業した、という人の話を聞いた。
「えーっ」
 つまりは、洗脳や悪徳商法に率先して引っかかりたい予備軍の人達が
結構いるってこと?!
 先日の新聞では、三十台後半の女性が、早く子供を産みたくて婚活す
るも、結果が出ず、一方、仕事も手抜きはできず、
「何に的を絞るべきか。誰か、私の代わりに決めて」
 と書かれた文章が載っていた。
 無記名なので、それっぽく創作したフィクションだったかも。
 なんにせよ、
「なんかなあ」
 だって、そういう人に、
「じゃあ、こうしたら」
 とアドバイスした途端、
「あー、それは無理」
 みたいな反応が返ってくるはずだから。
 決めるまでのストレスに耐えかねて、心にもないことを口走っている
だけ。
 ただ、周りの人を惑わせるから、なるべく慎もうね。
 そう言いたくなる私は、去年の十月にケータイを買い換えた。
 七月に周波数が切り替わる直前まで放っておくつもりだったが、急に
気が変わった。
 それまで六年間ほど使っていたのは、母親と同じ簡単ケータイ。同じ
機種なら、使い方を教えられると思ったのだ。
 でも、今回は、私は私の将来的な必要性から選ぶ。
 求めるのは唯一、海外でもそのまま使えるGSM対応機種。
 買いたいデザインはすぐに決まった。
 さて、ピンクか茶色か、どっちにしよう。
 と、突然、私の判断力は迷いの森へ。
 迷いに迷っても決められず、そうこうしているうちにピンクが完売。
生産終了の機種で、茶色も、
「今すぐ予約して、系列店にあれば取り寄せられますが」
 と一刻を争う状況。
 ここに及んで、ようやく、
「じゃあ、茶色で」
 心が決まった。
 一ヶ月後に販売される後継機種は、インターネットで見たけど、色が
好きじゃなかったし、今となっては、迷っているあいだに女の子っぽす
ぎるピンクが選択肢から脱落してくれたことに感謝なのだが。
 国際線の機内持ち込み用にキャリーバッグを買う時も、そうだった。
 機能と値段からカタチを選ぶところまでは頭がしっかり働いてくれた
のに、最後に色を選ぶ時が来ると、エネルギーが尽きたのか、
「どれがいいと思いますか」
 店員に意見を乞う始末。
 参考に聞くだけ。時間稼ぎするだけ。
 ・・・・。
 やだ。
 典型的なニホン人ってことじゃん。


              ***
 
  ということで、買い換えたケータイと購入したてのキャリーを
  持って海外旅行に行くので、次回は2月27日になる予定です。