友達の友達は、みな友達(フランス旅行記)

 マダムDは、海辺の町の貸しアパルトマンを予約する直前だったが、
最後の一泊が満員で取れない、困った、と言うので、私は、私が泊めて
もらうマダムBとムッシューLの住む町に限定して、インターネットで
見てみた。
 貸しアパルトマンも農家民宿も選び放題。
 マダムDは、ブルターニュというあまりに広大な地域を対象にしたた
め、うまく探せなかったらしい。
 農家民宿は、寝室、簡易キッチン、バストイレ付きの空間を貸し切る
宿泊形態で、母屋と完全に分離されていて、玄関も別。
 私の帰国日は早朝に出発する必要があり、彼女と私の宿泊場所が近い
ほど好ましいこともあって、マダムDは、私が泊めてもらう二軒の家か
ら車で十分ほどの農家民宿に決めた。
 そこに私達がパリから到着し、ほどなくマダムBが私を迎えにやって
きて、マダムBはマダムDが一人きりなのを見ると、
「恋人か誰かと一緒に来られると思っていました」
「えっ。私、そう言いましたよね」
 思わず横から口を挟む私。
「でも・・・」
 カップルが行動の最小単位という固定観念に毒されすぎて、私の言葉
は信用されなかった模様。
 一方、私は、マダムDと別れる間際に、
「じゃあ、十日後」
 と言ったら、
「それまでのあいだ、一日も会わないってことはないんじゃないの」
 と言われて呆然。
 私が友人宅に泊まっているあいだは私の邪魔をしないと言った彼女の
言葉を、私は真に受けていていたが、本心ではなかったのか。
 私のケータイは、日本経由の国際料金になるけれど、万が一の時は連
絡が取り合えると言ったのに、彼女が、彼女の使わなくなったケータイ
にプリペードカードを入れたのをパリの空港で貸してくれたのは、そう
いう理由だったのか。
 充電器と一緒にマニュアルまで渡された私は思ったものだった。
 これでケータイの操作方法を勉強しろってかい。
 そんな時間はないと思うよ。
 会う時間もまったくないと断言できます。
 期待に添えないけど、ごめんなさい。
 と、マダムBが、
「お一人だと知っていたら、うちにお泊めしたのに」
 とマダムDに言い、
「明日の昼食にうちに来ませんか」
 と彼女を招待した。
 翌日の夜も、翌々日の昼と夜も、その翌日も・・・。
 私の友達の友達。ただそれだけの理由で。
 こうして、マダムDの思いは遂げられることになった。
 ところが、三日後、彼女は招待してもらうことに不満を言い出すこと
になる。
 なんで私は、彼女のために、車で十分の農家民宿を見つけてしまった
のだろう。