怖い、汗冷え

 ふくらはぎがつったら、爪先を膝に引きつけるようにしたら治まる。
 大文字山で足がつった時、山の斜面を登るのは足の形が自然にそうな
ると考え、歩き続けて最悪の事態に突き進んだ私。  
 山登り中でも、着地した足で地面を蹴らずして前へは進めず、その時
の爪先の動きは傷んだふくらはぎの筋肉をさらに痛めつける行為になる、
とまで考えが至らなかったせいである。
 栄養補給でも判断ミスを幾つも重ねたし。
 帰宅後、私がこの日犯したすべての判断ミスをインターネットで確認
したあと、「冷え」も足がつる最大の要因、という件について検証する
ことにした。次回、山を歩いて、実は私は冷え性だった、と気づくこと
になったりしたら、ショックすぎる。
 すると。
 もうこの季節にモコモコ腹巻きパンツが私の必需品だし、冬の夜の幸
せは、銅製の湯たんぽで足を温めて眠ること。ただ、お尻が冷たい気が
して、まずは湯たんぽをお尻の下に敷いてお尻を温めるのだった。
 お尻に冷え性ってあるのか・・・?
 そんなの常識、と言わんばかりの情報量がすぐに膨大にパソコン上に
立ち現われて、焦る。
 じゃあ、化粧品売り場の肌チェックで、血行だけはいつも最低値で、
やっぱり機械はいい加減なんだと心密かに思っていたのは、いい加減な
のは客観的事実を無視する私だったってこと。
 指先をマッサージしてもらったら、「冷えている」と言われたし。
 だがあの日、私は下山途中に二度吐いた。
 ふもとに着いてからタクシーで木屋町に行き、店を選択する余裕がな
くて目の前の和食チェーン店に入ると、フランス人の友に無礼と知りつ
つテーブルに突っ伏し、彼が頼んだ料理が運ばれてきても頭を上げられ
なかった。
 寒いので室温を上げてもらい、それでも寒くて、服を触わったら冷た
いので、重ね着用に持ってきていたウール混の長袖を持ってトイレに入
ったら、汗で下着がからだに張り付き、びっしょり。気持ち悪い。
 下着の着替えはないけれど、気づいたからには、このまま着続けるわ
けにいかない。
 乾いたウール混の長袖だけを身につけたら、それを境に一気に体力が
回復。
 熱いお茶を何杯もお代わりするだけで何も食べたくないから何も注文
しないが、彼と熱心に話し込めるまでになった。
 この一連は「冷え」ではなく「汗冷え」。
 寒がりなので、わざわざ今はやりの発熱下着を着ていったのは「水分
を熱に変える」という売り文句を、スポーツにも最適、と解釈したから。
 その結果、からだが芯から冷えたらしい。