発熱下着と脇汗

 どうもうまくいかない、と四苦八苦していたのが、道具を換えたら急
ラクにできるようになった、というのはよくある話で、道具は大切。
 ウォーキングや山歩きの道具は服装である。
 アウトドア用品の店に足しげく通い、いろいろ揃えた。が、下着は下
着のくせに結構値が張るので迷う。
 私が買うつもりの長袖Tシャツは吸汗速乾素材だからそれで代用でき
ますよ、と店員が言ってくれた。
 大文字山登山の日。
 朝晩がぐっと冷え込む季節になっていたので、そのTシャツを本来の
アウターとして着ることにして、その下に発熱下着を着た。
 山登りに綿の下着は厳禁だが、その発熱下着は綿混ではないし、汗を
熱に変えてくれるというのがいいじゃない。
 しかし、私は汗冷えし、胃が冷えて吐いたし、最悪の事態に陥った。
 レーヨンは、綿同様、水分を吸収する能力に優れるが、それを外に放
出する能力は劣り、水分で冷たくなった繊維が体温を奪う。混率三十パ
ーセント程度でもかなり危険、と知って、青ざめた。
 インターネット上に情報は膨大でも、「これに関する情報があるはず」
と根拠なく確信し、適切に言葉を入力して調べ当てないと、有用な情報
もあってなきがごとし。探し当てられないのは自己責任なんだ、と思い
知らされたのだ。
 この時を機に、私は肌感覚に敏感になった。
 もっとも、日常生活では、以前から着ているレーヨン混の発熱下着で
問題なかろう、とそれを着てショッピングに行ったら、人混みで暑かっ
たのか、背中をツーッと汗が伝って、やっぱり汗冷え。
 家に帰って、即、着替えた。
 そこまでいかない時でも脇の下は汗で汗冷えする。今までは注意を払
っていなかったので、なんとなく感じていても意識されないままになっ
ていたのだろう。
 スポーツメーカーから出ている発熱下着ならいいのではないか、と日
常用廉価版を購入してみた。
 汗冷えは解消。でも、脇の下だけは汗冷えのような冷たい感触になる。
あと、肌の接触感が滑らかでないのは、レーヨンなしだとそうなってし
まうのかなあ。
 なんにせよ、くせ者は脇汗だと見た。
 暖房が効く冬になったら、発熱下着だと、きっと、もっと脇の下に汗
をかくはず。
 ささやかな部分的汗冷えだとして無視する。
 あるいは、山登りの装備に学んで、素肌の上には速乾素材の下着、そ
の上に保温性のある下着を重ねる。
 脇の下だけ速乾素材の発熱下着があったら一枚で済むんだけどな。
 私が知らないだけで、この世に存在していたりするのかな。